販売する商品を買ったときに「仕入高」を使うと聞いたのですが、コピー用紙などの消耗品を買ったときも「仕入高」に入れていいんでしょうか?
コピー用紙は「消耗品費」です。
「仕入高」は、お客さんに販売するために仕入れた商品・材料の原価を計上する科目で、自社で使うものとは明確に区別します。ここを混同すると売上原価が狂い、利益が正確に計算できなくなりますので、この記事でしっかり整理しましょう。
1「仕入高」が使われる取引例
「仕入高」は、販売目的で商品・製品の材料を外部から購入した際に使う科目です。業種によって仕入れる対象が異なります。
| 業種 | 仕入高に計上する取引(具体例) | 主な仕入先 |
|---|---|---|
| 小売業 | 販売する商品(日用品・衣料品・電気製品・食品・文具・雑貨等)の購入代金 | 卸売業者・問屋・メーカー |
| 卸売業 | 取引先(小売業者等)へ転売する商品の購入代金 | メーカー・輸入業者 |
| 飲食業 | 料理に使う食材・飲料・調味料・酒類の購入代金 | 食材業者・市場・問屋 |
| EC・ネット販売 | Amazon・楽天等で販売する商品の仕入れ代金、輸入品の購入代金 | 国内卸・海外仕入先 |
| アパレル業 | 販売する衣料品・バッグ・アクセサリーの仕入れ代金 | アパレルメーカー・海外ブランド |
| 書籍・出版物販売 | 書籍・雑誌・CD・DVDの仕入れ代金 | 取次・出版社 |
| 自動車販売業 | 中古車・新車の仕入れ代金 | オークション・ディーラー |
| 不動産販売業(分譲) | 販売目的で取得した土地・建物の購入代金 | 地主・デベロッパー |
※製造業では、販売する製品を作るための原材料購入は「材料費(原材料費)」として製造原価に計上します。完成品を外部から仕入れて販売する場合は「仕入高」を使います。
1-1 「仕入高」ではなく別科目で処理する取引
以下の購入が自社利用目的の場合は、販売目的ではないため「仕入高」ではなく別の科目を使います。
| 取引内容 | 正しい科目 | 理由 |
|---|---|---|
| コピー用紙・ボールペン・文具等の事務用品 | 消耗品費 | 自社使用目的のため売上原価にならない |
| 業務用パソコン・プリンター(自社使用) | 消耗品費または器具備品 | 自社使用目的 |
| 製品を作るための原材料(製造業) | 材料費(原材料費) | 製造原価として別途管理 |
| 社員が使う工具・作業用品 | 消耗品費 | 自社使用目的 |
| 外部に製造・加工を依頼した費用 | 外注費 | 役務提供の対価 |
| 配送・運搬にかかった費用 | 荷造運賃(または運賃) | 物流費用(販売費) |
| 陳列用の棚・ショーケース(固定資産として使用) | 器具備品 | 固定資産として資産計上 |
「仕入高」か「固定資産」かは、購入したモノの種類ではなく、その会社の事業内容と購入の目的によって決まります。同じ「不動産」や「車両」でも、会社の業種と使い方次第で科目がまったく異なります。
| 購入したもの | 仕入高になるケース | 固定資産になるケース |
|---|---|---|
| 不動産(土地・建物) | 不動産販売業者が転売目的で取得した場合(商品として在庫管理) | 製造業・サービス業等が自社の事務所・工場・倉庫として使用する場合 |
| 車両 | 中古車販売業者が仕入れて販売する場合(商品在庫) | 運送会社・一般企業が営業車・配送車として自社使用する場合 |
| パソコン・電化製品 | 家電量販店・EC事業者が販売する商品として仕入れた場合 | 一般企業が業務用として自社で使用する場合 |
| 貴金属・宝飾品 | 宝飾店・金買取業者が転売目的で仕入れた場合 | 一般企業が社内の装飾・資産目的で購入した場合 |
判断の基準は「販売して収益を得るために買ったか(仕入高)」vs「自社の業務に継続的に使うために買ったか(固定資産)」です。同じ中古車でも、中古車販売業者の在庫は「仕入高(商品)」、運送会社の配送車は「車両運搬具(固定資産)」となります。
2「仕入高」とは
損益計算書(P/L)では「売上原価」の区分に表示され、「売上高」から「売上原価(仕入高ベース)」を差し引いた額が売上総利益(粗利)となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| グループ | 費用グループ |
| 決算書の表示 | 損益計算書(P/L)の「売上原価」区分 |
| 類似科目 | 消耗品費 |
| 税区分 | 課税仕入(10%)※食品等は軽減税率(8%) |
| インボイス有無の判定 | 必要(仕入税額控除のため、取引先から適格請求書の受領が必要) |
2-1 売上原価の計算構造
仕入高は「当期に仕入れた金額」ですが、実際の売上原価は棚卸(期末在庫)を差し引いて計算します。
例:期首在庫500,000円、当期仕入3,000,000円、期末在庫700,000円の場合
→ 売上原価 = 500,000 + 3,000,000 - 700,000 = 2,800,000円
つまり、当期に仕入れたすべてが「売上原価」になるわけではありません。
期末に売れ残った在庫は「商品(資産)」として翌期に繰り越されます。この棚卸の計算が利益に直結するため、正確な期末在庫の把握が重要です。
3「仕入高」の仕訳例
※税込経理方式の場合。
3-1 現金・振込による仕入れ
【仕訳例①】小売店が商品(税込110,000円)を現金で仕入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 110,000円 | 現金 | 110,000円 |
【仕訳例②】EC事業者が販売用商品(税込55,000円)を銀行振込で仕入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 55,000円 | 普通預金 | 55,000円 |
【仕訳例③】飲食店が食材(税込32,400円)を市場で現金購入した(軽減税率8%)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 32,400円 | 現金 | 32,400円 |
※飲食業で仕入れる食材・飲料は消費税の軽減税率8%が適用されます(酒類は10%)。
3-2 掛け仕入れ(買掛金)
卸売業者・問屋との継続取引では、月末締め翌月払いなどの掛け取引が一般的です。商品を受け取った時点で仕入高を計上し、代金支払いは後日となります。
【仕訳例④】卸売業者から商品(税込330,000円)を掛けで仕入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 330,000円 | 買掛金 | 330,000円 |
(翌月末に代金を銀行振込で支払ったとき)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 330,000円 | 普通預金 | 330,000円 |
【仕訳例⑤】食材業者から飲食店向け食材(税込216,000円)を月末締めで仕入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 216,000円 | 買掛金 | 216,000円 |
【仕訳例⑥】アパレル業者から秋冬物衣料品(税込1,100,000円)を掛けで仕入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 1,100,000円 | 買掛金 | 1,100,000円 |
3-3 前払金がある場合の仕入れ
手付金・内金(前払金)を先に支払い、後日商品を受け取る場合は2段階の仕訳になります。
【仕訳例⑦】輸入商品(合計税込550,000円)の注文時に手付金110,000円を支払い、商品入荷時に残額440,000円を振り込んだ
<注文時(手付金支払い)>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払金 | 110,000円 | 普通預金 | 110,000円 |
<商品入荷時(仕入れ計上)>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 550,000円 | 前払金 | 110,000円 |
| 普通預金 | 440,000円 |
※仕入れの計上は商品を受け取った(入荷した)時点です。支払い日ではありません。
3-4 返品・値引き・割戻し(リベート)
返品・値引き・割戻しが発生した場合は、仕入高を減額(貸方に計上)します。
【仕訳例⑧】仕入れた商品に不良品があり、一部を返品(税込22,000円)した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 22,000円 | 仕入高 | 22,000円 |
【仕訳例⑨】仕入先から値引き(税込11,000円)を受けた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 11,000円 | 仕入高 | 11,000円 |
【仕訳例⑩】取引量に応じた割戻し(税込55,000円)を仕入先から受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 55,000円 | 仕入高 | 55,000円 |
※割戻し(リベート)は仕入高の減額として処理します。「雑収入」にしないよう注意してください。
3-5 期末棚卸の仕訳
決算時に期末在庫を「商品(資産)」として計上し、売上原価から除外します。これが棚卸の仕訳です。
【仕訳例⑪】決算期末に商品の在庫を数えたところ、期末棚卸高が300,000円だった(三分法)
<決算整理:期末棚卸高の繰り越し>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 商品(繰越商品) | 300,000円 | 仕入高 | 300,000円 |
<翌期首:期首棚卸高の振り戻し>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 300,000円 | 商品(繰越商品) | 300,000円 |
【仕訳例⑫】「期末商品棚卸高」科目を使う方法(P/L上で明示する方式)
会計ソフトによっては、売上原価の内訳を損益計算書上に「期首商品棚卸高・当期仕入高・期末商品棚卸高」の3行で表示するために、「仕入高」の相手科目として「期末商品棚卸高」という専用科目を使う方式があります。仕訳例⑪の「仕入高を直接減額する」方式と仕訳の形は違いますが、売上原価の計算結果はまったく同じです。
<決算整理:期末在庫の計上>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越商品 | 300,000円 | 期末商品棚卸高 | 300,000円 |
<翌期首:期首在庫の振り戻し>
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 300,000円 | 繰越商品 | 300,000円 |
この方式を使うと、損益計算書の「売上原価」欄に次のように内訳が表示されます。
| 科目 | 金額 |
|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 500,000円 |
| 当期仕入高 | 3,000,000円 |
| 期末商品棚卸高 | △300,000円 |
| 売上原価 | 3,200,000円 |
3-6 業種別の仕入れ具体例
【小売業・コンビニや家電量販店のような業態】よく仕入れる商品
- 飲料・食品・菓子類(軽減税率8%)
- 日用品・清掃用品・トイレットペーパー(標準税率10%)
- 文具・ノート・ペン類(標準税率10%)
- テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの家電品(標準税率10%)
【EC・ネット通販業】よく仕入れる商品
- 電化製品・スマートフォンアクセサリー(標準税率10%)
- 健康食品・サプリメント(食品にあたる場合は軽減税率8%)
- 化粧品・美容用品(標準税率10%)
- アパレル・靴・バッグ(標準税率10%)
- 玩具・ゲーム・ホビー用品(標準税率10%)
- 海外からの輸入商品(輸入消費税の扱いに注意)
【飲食業】よく仕入れる食材・飲料
- 野菜・果物・食肉・鮮魚・乳製品・卵(軽減税率8%)
- 米・小麦粉・砂糖・油・調味料(軽減税率8%)
- ビール・ワイン・日本酒・ウイスキー等の酒類(標準税率10%)
- ソフトドリンク・ミネラルウォーター(軽減税率8%)
- 使い捨て容器・割り箸・ストロー(標準税率10%)
3-7 消費税の処理方法(税込経理・税抜経理)
採用する経理方式によって仕訳が異なります。
商品(本体価格200,000円、消費税20,000円)を掛けで仕入れた場合の比較
【税込経理方式】消費税を含めた金額で仕入高に計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 220,000円 | 買掛金 | 220,000円 |
【税抜経理方式】仕入高(本体)と消費税(仮払消費税)を分けて計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 200,000円 | 買掛金 | 220,000円 |
| 仮払消費税 | 20,000円 |
※中小企業では税込経理方式を採用するケースが多い。どちらの方式でも最終的な納税額は同じです。
4「仕入高」処理上の注意点
4-1 仕入れの計上時期
仕入高の計上タイミングは「商品を受け取った(入荷した)時点」が原則です。支払い日ではありません。