マイナンバーの提供を受けるときには、提供を受ける側がその提供者の本人確認を行う必要があります。
今回はその本人確認の方法について具体例を示しながらわかりやすく解説していきたいと思います。
本記事は国税庁の提供する「国税分野における番号法に基づく本人確認方法(事業者向け)」を参考にしています。
マイナンバーを使用するのはどんなケース?
まずマイナンバーを使用するのはどのような場面かをつかんでおきましょう。
一般の民間企業や個人事業でマイナンバーを使用することとなる主なケースは次の3つです。
- 給与所得の源泉徴収票、給与支払報告書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の必要な書類に記載して、税務署長、市区町村長、日本年金機構等に提出する
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書や不動産の使用料等の支払調書などの支払調書を作成する
- 確定申告書や申請書等のマイナンバーの記載のある書類を税務署等の行政機関に提出する
詳しくは記事「やさしいマイナンバー制度の適用範囲と5つの取り扱い上の注意点」をご覧ください。
以上の3つのケースでマイナンバーを使用することとなりますが、その際マイナンバーの提供を受ける側がどのような本人確認をする必要があるのでしょうか。
本人確認の方法
対面の場合
税理士報酬や不動産の賃借料のような支払調書を作成する必要のある取引をした場合や、税務署などにマイナンバーの記載のある書類を提出する場面などが想定されます。
1 マイナンバーカード(個人番号カード)の提示 ⑴
マイナンバーカード(個人番号カード) の裏面に記載された個人番号、表面に記載された氏名及び住所又は生年月日及び顔写真で身元確認を行います。
2 通知カードと写真付き身分証明書 ⑵
通知カード※で番号を確認し、運転免許証などの写真表示のある書類で身元確認を行います。
通知カードで本人確認をする場合には通知カードだけでなく、顔写真のある身分証明書も併せて確認します。
※市区町村から通知された本人の氏名、住所、生年月日、性別、個人番号が記載されたカード
写真付き身分証明書の例
- 運転免許証
- パスポート
- 運転経歴証明書
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 在留カード
- 写真付き学生証、社員証、資格証明書
- 税理士証票
3 通知カードと写真付きでない身分証明書を2つ ⑶
通知カードで番号を確認し、写真付きの身分証明書がない場合には次の具体例に挙げるものを2以上で確認することになります。
国民健康保険の被保険者証と年金手帳など写真付きでない身分証明書を2つ以上の具体例
- 国民健康保険の被保険者証
- 年金手帳
- 写真のない学生証、社員証、資格証明書
- 国税、地方税、社会保険料、公共料金の領収書
- 印鑑登録証明書
- 源泉徴収票、支払通知書
郵送の場合
パターン1 ⑷
郵送で本人確認を行う場合には前述の「対面の場合」であげた1〜3の書類の写しを郵送してもらうことになります。
なお、マイナンバーカードの写しについては、表面は、専用のカードケースに入れた状態(臓器提供意思表示等を見えないようにした状態)でコピーしても差し支えありません。 マイナンバーカードの裏面については、カードケース に入れた状態では個人番号が見えないことから、必ずカードケースから出してコピーする必要があります。
パターン2 ⑸
支払調書を作成する必要のある取引を行っている事業者がその相手先から個人番号の提供を受ける場合に、その相手先に対して氏名及び生年月日または住所を印字した個人番号の提供を依頼する書類を送付し、その相手先がその書類に通知カードやマイナンバーカードの裏面の写しを貼付して返送する方法。
この場合は、書類を郵送して送り返されてくることで、その氏名、住所で郵便物が届いたことがわかり、それによりその個人情報が正しいことがわかるのでこれで本人確認がとれたとし、その他の身分証明書などがなくてもあとは通知カードなり、マイナンバーカードで番号確認ができれば良いという考え方に基づいています。
メールによる場合 ⑹
事業者が講演会の講師に対して謝礼を支払い、法定調書の提出が必要となるような場合に、講師がイメージデータ化した本人確認書類をメールにより送信することで、 事業者が個人番号の提供を受ける方法。
マイナンバーカードの両面をスマホなどで撮影またはスキャナでイメージデータ化して送信します(マイナンバーカードがない場合は、前述の番号確認書類及び身元確認書類の送信が必要となります。)。
なお、 継続的な契約関係にある場合には、上記手続により提供を受けた個人番号(個人番号を含む個人情報)を法定調書作成のために保管することにより、次回以降も利用することが可能であり、改めて個人番号の提供を受ける必要はありません(税法上、個人番号の告知を受ける必要があるとされている場合を除く。)。
身元確認書類が不要なケース ⑺
従業員の給与関係事務や社会保険事務を処理する際の従業員の本人確認を知覚により行う方法。
例えば従業員が勤務先に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出する際に、勤務先のとりまとめ担当者が知覚により従業員の身元確認を行う場合などがこれに当てはまります。
従業員の税金太郎さんは、自宅で妻(控除対象配偶者)である税金花子さんの通知カードにより個人番号を確します。税金花子さんは税金太郎 さんの配偶者であり「知覚」(見て判断)することにより本人に相違ないことが判断できますので、税金花子さんから身元確認書類の提示を求める必要はありません。
また、日頃から税金太郎さんと同じ部署で仕事をしているとりまとめ担当者は、税金太郎さんを「知覚」(見て判断)することにより本人に相違ないことが判断できますので、税金太郎さんから身元確認書類の提示を求める必要はありません。
なお、税金太郎さんについて身元確認書類の提示を不要とするためには、 採用時などに前述の身元確認と同程度の身元確認書類(運転免許証、写真付き学生証等)による確認を行っている必要があります。
マイナンバーの提供を拒否された場合
これまでマイナンバーの提供を受ける際の本人確認をどのようにするかという話を続けてきましたが、最後にそもそもマイナンバーの提供を拒否された場合、事業者としてはどのように対応すればよいのかという点も見ておくことにしましょう。
国税庁の提供する国税分野におけるFAQで次のような例が掲載されていますので、そちらを確認しておきましょう。
Q 従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。
A 法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
まとめ
以上のように、マイナンバーの提供を受けるときには本人確認が必要になります。
従業員に対する本人確認は、採用時に「対面の場合」で説明した内容と同程度の本人確認を取っておけば、あとは見て本人だとわかるので身分証明書等での本人確認は不要です。
また、支払調書にマイナンバーが必要な場合も一度本人確認を取っていれば、次回以降わざわざ本人に確認を取る必要はありません。
マイナンバーは悪用されないようにということがさかんに言われているだけに、運用の開始当初は不動産系の支払調書を作成する場合などに、その相手先が個人事業主の場合はマイナンバーの提供が拒否されることも予想されます。そのような場合は、拒否することによる罰則もありませんので、拒否されたことを記録するにとどめ、無理せずにマイナンバーの部分は空欄で提出するということも実務的な運用としては十分考えられます。
日を重ねていけば実務上のQ&Aなども充実していくことと思いますので、世の中の流れを見ながらという姿勢で対応していくことが肝要だと思います。
マイナンバーの安全管理措置・・・やさしいマイナンバー制度の適用範囲と5つの取り扱い上の注意点
執筆者 元国税調査官 税理士 ジャパンネクス株式会社代表 海野耕作
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