2022年最新電子帳簿保存法の最強攻略バイブル!税理士がわかりやすく解説

2022年電子帳簿保存法 最強攻略バイブル

 

 

2022年から開始になる新しい電子帳簿保存法について、どのような制度か、中小企業が知っておかなければならないこと、適用要件、メリットやデメリット、実務ではどのように運用されるべきかや使い勝手等を元国税調査官・税理士がわかりやすく徹底的に解説します。中小企業に必要な知識のみを抽出し、網羅的に実務に直結する形で解説されていますので、この記事を読破すれば、あなたはもう電子帳簿保存法のエキスパートです。

これまで電子帳簿保存法の施行以来、その適用を受けることで大量に保存しなければならなかった帳簿や証拠書類を紙で保存することなく電子情報として保存することができるという大きなメリットがあったにもかかわらず、電子帳簿保存をしているという人に会ったことがなかった、というのが実際のところだったかと思います。

それはなぜか。

そのメリットより運用が面倒すぎてその運用コストの方がはるかに高かったため、電子帳簿を適用するくらいなら紙で保存するわ、という結論に至るケースが多かったためと思われます。

しかし令和3年度(2021年度)税制改正の内容からすると、ついに、今度こそ多くのケースで電子帳簿メリットがその運用コストを上回り、帳簿や証拠書類を電子的に保存することが一般的になる日が訪れるのではないかと思われます。一部そうでもない規定もありますが…

それでは、令和4年(2022年)以降、電子帳簿保存法の改正によって電子帳簿保存はどのようになるのかを見ていきましょう。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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新しい電子帳簿保存法の概要

令和3年度(2021年度)の税制改正で電子帳簿保存法は次のように運用されることになりました。

電子帳簿保存法は、その形態によって次の3つに大きく分類されます。

  1. コンピュータを使って自社が作成する帳簿書類の電子保存
  2. スキャナ電子保存
  3. 電子取引情報の電子保存

今回新しくなった電子帳簿保存法の全体像は次のとおりです。

電子保存の種類 対象書類 保存方法
❶ 自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの保存 ① 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・仕入帳等)

② 書類(決算書・契約書・領収書の発行控え等

オリジナルの電子データ又は出力した紙
❷ スキャナ保存 受領した契約書・領収書と同書類の発行控え スキャンした電子データ又は出力した紙
❸ 電子取引情報の電子保存 電子的にやり取りされた契約書・請求書・領収書等 オリジナルの電子データ

なお、このバイブルでは、これらの3形態を実務でどのように運用するかまでを解説すると、一つの記事ではとても収まりませんので詳しい解説はそれぞれの記事にリンクさせる形で構成されています。

電子帳簿保存法を適用するメリット

電子帳簿保存法 3つのメリット

電子帳簿保存法を適用する主なメリットを改めて確認しておきましょう。次の3つが挙げられます。

  1. 保管コストの削減
  2. ストレス軽減
  3. 検索の利便性アップ

保管コストの削減

電子帳簿保存法を適用していない場合、これまでは電子取引情報を紙で出力し、それを個人事業主では最長7年、法人では最長10年紙で保存する必要がありました。

規模の大きい会社であれば、倉庫に保管しているということもあるでしょう。

規模の小さな会社であってもファイリングした書類を保管する書棚やキャビネを用意し、ファイリングのためのバインダー等の文具類が必要でした。また紙に印刷するための用紙とトナーも必要です。

またファイリングしたり、保管場所に移す作業等の事務処理作業に人的コストを費やしてきました。

これらのコストが大幅に削減されます。

ストレス軽減

電子帳簿保存法を適用していない場合、前述のとおり、すべて印刷してファイリングしていました。対象の帳簿書類を画面上で確認できる場合にも、税法に規定されている帳簿書類の保存要件をクリアするためだけにわざわざコストをかけて印刷し、さらにファイリングまでしていたわけです。

このモチベーションの全く上がらない作業から開放されます。

検索の利便性アップ

会計ソフトを使用していれば帳簿の検索性は元々ありましたが、取引の証拠書類については、取引年月日、金額、取引先で検索できる機能が要件となっているケースがほとんどなので、証拠書類がこの3つの内容で検索が可能になります。

例えば、請求書をPDFでメール送信している場合、これを印刷してファイリングしてました。何年か前のあの会社に送った見積書をみる必要が出てきた場合、見積書はエクセルで上書きして作っているのでパソコンでは検索できない。どのファイルに入れたっけ?そのファイルどこにあるんだ?なんてことがなくなります。

自分のデスクのPCで必要な書類を確認することができます。

クラウドに保存されていれば、インターネットに繋がっていさえすればどこからでもいつでもアクセスが可能なので、テレワークを促進させるというメリットもあります。

他にも災害時にバックアップさえあれば被害を避けられたり、紙やトナーを削減できるのでエコであることなどもメリットでしょう。

電子帳簿保存法のデメリット

電子帳簿保存法を適用する場合のデメリットは、電子帳簿保存法を適用するために備えなければならない様々な要件があります。

これまでこの要件をクリアするハードルが高かったためその普及が妨げられていたわけです。

つまり、この電子帳簿保存法の適用要件をクリアするためのコストがそのままデメリットなわけです。

つまり

 導入コスト < 導入メリット

となった時だけ電子帳簿保存を導入することになります。

このバイブルではこの3つの形態それぞれで導入コストを評価し、実務で導入すべきかどうなのかを考察します。

 

新しくなった電子帳簿保存法の3つの形態の概略に触れながらそれぞれの記事を紹介していきます。

電子帳簿保存法形態1 自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの保存

電子帳簿保存法 自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの保存

帳簿や決算書類等を自己が最初から一貫してコンピュータで作成している場合は、それを電子的データのまま保存することができるというものです。

電子帳簿保存法形態1の対象書類

自己が最初から一貫してコンピュータで作成したというのがポイントです。

したがって相手方から交付される領収書等はここでは当てはまりません。

そして自己が最初から一貫してコンピュータで作成した次の帳簿書類が電子保存の対象となります。

国税関係帳簿 現金出納帳、預金元帳、売掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳)等の帳簿類
国税関係書類 決算関係書類 貸借対照表、損益計算書、棚卸表などの決算関係書類
その他書類 注文書、契約書、請求書、領収書などの取引の証拠書類(発行控え)

電子帳簿保存法形態1の要件

自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータを電子保存する主な要件は次の4つです。

  1. 正規の簿記の原則に従って記帳されていること
  2. 電子保存に関する事務手続を明らかにした書類の備付け
  3. 電子保存対象の国税関係帳簿書類を表示できるパソコンやタブレット等のコンピュータ、プリンタ、操作説明書が用意され、整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できること
  4. 国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じること

この要件の中でハードルが比較的高く準備を要するのは要件2の「電子保存に関する事務手続を明らかにした書類の備付け」です。ただこれも国税庁がサンプルを公表してくれているので、それを参考に作成すればそう難しいものではありません。

その他の要件1と3は会計ソフトを使用している環境ではすでに対応できているというケースが多いでしょう。要件4は、応じるだけですので準備も不要です。

このように、

自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの電子保存は導入が容易

です。

「電子帳簿保存法に対応した会計ソフト」という売り言葉はもはや死語となったと言えるほどです。

電子帳簿保存法形態1の攻略法

この電子帳簿保存法形態1を実務で最も簡単に攻略する方法を一覧で紹介します。

帳簿書類の種類 攻略法
国税関係帳簿書類 公表されているサンプルを編集して「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」を作成する
国税関係帳簿 一般的に流通している会計ソフトを使用する
国税関係書類 決算関係書類
その他書類 索引簿を作成する

 

電子帳簿保存法形態1の概略は以上です。

次の記事で「自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの電子保存」に詳しく解説しています。「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」のサンプルや索引簿のサンプルを紹介しています。是非最短でマスターしてください!

電子帳簿保存法形態2 スキャナ保存

電子帳簿保存 スキャナ保存

領収書等の証拠書類を受領し、それをスキャナやスマホで撮影し、電子化したデータを一定の要件の下で保存を認めるというものです。

電子帳簿保存法形態2の対象書類

スキャナ保存の対象となる書類は以下のとおりです。

  • 相手から受領した領収書、注文書、契約書、送り状、見積書その他これらに準ずる書類
  • 自己が作成した領収書、注文書、契約書、送り状、見積書その他これらに準ずる書類控え

電子帳簿保存法形態2 スキャナ保存の要件

スキャナ保存の要件は次のようにたくさんあります。

その要件は電子帳簿保存法の3つの形態の中で群を抜いて多くなっています。

要件 難易度
入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力) 低〜高
タイムスタンプの付与
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ、 4ポイント文字の認識等)の備付け
検索機能の確保
一定水準以上の解像度(200dpi 以上)による読み取り
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ 256 階調(約 1677 万色)以上)
解像度及び階調情報の保存
大きさ情報の保存 低〜高
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認等)
入力者等情報の確認
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持

難易度の高い「入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)」と「大きさ情報の保存」が導入できるかどうかのキーとなっています。

特に「入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)」が最大のネックになります。

個人的にはスキャナ保存の要件を総合的に判断して多くの中小企業が導入を見送るのではないかと思うほど導入は難しいとジャッジします。
もちろん会社の規模や形態によっては導入できるというケースもあろうかと思います。

電子帳簿保存法形態2 スキャナ保存の攻略法

スキャナ保存を導入するなら最も簡単な攻略法はこうなります。
攻略法1:事務処理規程を作成し、最長2ヶ月以内の業務サイクル後おおむね7営業日以内の入力期限をゲット!
攻略法2:ScanSnap等の大きさを自動計測するスキャナを使い、誰がスキャンしてもいい環境を作る
攻略法3:可能な限り入力必須の項目を自動で取得してくれるサービスを利用する
事務処理規程のハードルは高いですが、超えてしまえば処理に余裕が生まれますので、継続できる可能性が高くなると思います。
攻略法2は必須です。間違ってもスマホ撮影はやめましょう。
また、細かい要件を攻略法3がどこまで吸収してくれるかで日々の負担が変わってくるでしょう。
次の記事で、電子帳簿保存法のスキャナ保存をわかりやすく徹底解説していますので、ぜひマスターしてください!要件について詳細に解説し、実務では具体的にどのように対応すべきかについても詳しく解説しています。

電子帳簿保存法形態3 電子取引情報の電子保存

電子帳簿保存法 電子取引の電子保存

インターネット等による取引、EDI取引、電子メールにより情報をやり取りする取引、インターネット上のサイトで取引情報をやり取りする取引を電子取引といいます。

その電子取引で、受領又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書等はそのデータを保存しなければならないというものです。

 

最大の特徴は、「保存しなければならない」というところです。

電子帳簿保存法の他の二つの形態は紙でも保存できるが電子保存もできるという2者択一の性質を持っていますが、この電子取引の電子保存は強制です。

 

例えば請求書がpdfファイルでメールに添付されて届いた場合、そのPDFファイルをそのままデータで保存します。これを紙に印刷して保存することはできません。

そして

例外なく事業者全員に強制適用される

という点も絶対に抑えなければならない点です。私には関係ないでは済まされません。

電子帳簿保存法形態3 電子取引の電子保存の要件

全事業者に強制的に適用される電子取引の電子保存の要件は以下の3つです。

  1. コンピュータ、ディスプレイとカラープリンタの備え付け
  2. 不正な改ざん防止策を講じる
  3. 検索機能の確保

この要件で最も注意が必要なのは、2番目の「不正な改ざん防止策を講じる」です。

この要件の内容とその難易度を一覧にすると次のようになります。次の要件のうちいずれか一つを実施する必要があります。

要件 難易度
⒈ タイムスタンプが付された後の電子情報の授受 高い
⒉ 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに入力した者等を確認できるようにする 高い
⒊ ①データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム

②訂正削除ができないシステムを利用

① 高い

② 低い

⒋ 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け 低い

この電子取引の電子保存は全事業者に強制適用なのでハードルが高い要件があると実行不可能となり、電子帳簿保存法自体が機能しなくなってしまう恐れがあるため、不正な改ざんを防止するという目的と誰もが対応できる必要があるという目的を同時に満たすための要件として4つ目の「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け」が用意されたと考えられます。上の表の1〜3の要件を満たすのは難しい会社があったとしても4つ目は、満たせるものになっています。

事務処理規程のサンプルを国税庁が用意しています。

電子帳簿保存法形態3 電子取引の電子保存の攻略法

次の3つの攻略法をすべて実践することで最も簡単に電子取引情報の保存の要件を満たすことになります。

攻略法1:パソコン等のデバイスとプリンタを備え付ける
攻略法2:「訂正削除ができないシステムを利用」している場合はその時点で要件クリア。それ以外の電子取引情報の電子保存に対応するため「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を備付ける
攻略法3は次の2つのうち1つを選択できます。
攻略法3-1:「20221130_㈱霞商事_20,000」等のファイル名に規則性をもたせることにより検索機能確保 + 税務調査官のダウンロードの求めに応じる
攻略法3-2:国税庁のサンプル索引簿を利用して3つの検索機能を確保する
この知らないでは済まされない全事業者対象の強制適用は令和4年(2022年)1月1日以後に行う電子取引について適用が開始されます。
今回の改正で最も注目すべき「電子取引の電子保存」については、次の記事で完璧に解説していますので、ぜひマスターしてください!要件をクリアするための事務処理規程や索引簿の作成方法も詳しく解説しています。

 

電子帳簿保存法 実務での適用難易度

新しい電子帳簿保存法の3つの形態を実際に実務で導入する際の難易度を改めて確認しておきましょう。

電子帳簿保存法の種類 難易度
❶ 自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの保存 低い
❷ スキャナ保存 高い
❸ 電子取引情報の電子保存 中程度

❶は会計ソフトを利用していれば基本的にはクリアされるというくらい導入の難易度は低く、❸は強制適用なので、❶と❸は今回の改正で普及することになるでしょう。

問題は❷のスキャナ保存です。その他の2つの形態とは比べ物にならないくらい難易度が高いので、会社の規模や形態によって導入できる会社もあるかもしれませんが、中小企業の多くが導入を試みても実際には運用に至らないということになる可能性も否定できません。

電子帳簿保存法 まとめ

中小企業向けに新しい電子帳簿保存法が実務ではどのように運用されるかまで想定して解説してきました。

各形態の電子帳簿保存をよく理解し、自社ではどのように運用していくべきかの判断材料になってくれればうれしく思います。

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