
2021年度税制改正で大きく改正された電子帳簿保存法について、中小企業向けに元国税調査官・税理士がわかりやすく解説します。
この記事は会計ソフトを利用することを前提に書かれています。
これまで電子帳簿保存法の施行以来、その適用を受けることで大量に保存しなければならなかった帳簿や証拠書類を紙で保存することなく電子情報として保存することができるという大きなメリットがあるにもかかわらず、電子帳簿保存をしているという人に会ったことがなかった、というのが実際のところだったかと思います。
それはなぜか。
そのメリットより運用が面倒すぎてその運用コストの方がはるかに高かったため、電子帳簿を適用するくらいなら紙で保存するわ、という結論に至るケースが多かったためと思われます。
しかし令和3年度(2021年度)税制改正の内容からすると、今回解説する自社が最初から一貫してコンピュータで作成する帳簿書類の電子保存に関しては、今度こそほとんどのケースで電子帳簿のメリットがその運用コストを上回り、帳簿や証拠書類を電子的に保存することが一般的になる日が訪れるのではないかと思われます。
それでは始めていきます。
なお、この記事は新しい電子帳簿保存法の区分に応じた3部構成になっていて、さらにその要点をまとめた攻略バイブルという4つの記事で構成されている記事のうちの一つです。
- 新電子帳簿保存法で会計ソフト等で作成の帳簿書類を電子保存する方法
- 新電子帳簿保存法のスキャナ保存をわかりやすく徹底解説
- 新電子帳簿保存法の電子取引は紙での保存廃止!全事業者対象
電子帳簿保存法 自社が作成する帳簿書類の電子保存の概要
令和3年度(2021年度)の税制改正された新しい電子帳簿保存法は、保存すべき帳簿書類の性質によって以下の3つの形態に区分して規定されています。
- コンピュータを使って自社が作成する帳簿書類の電子保存
- スキャナ電子保存
- 電子取引情報の電子保存
電子帳簿保存法の全体像を一覧にするとこんな感じです。
| 電子保存の形態 | 対象書類 | 保存方法 |
|---|---|---|
|
❶ 自己が最初から一貫してコンピュータで作成したデータの保存
|
① 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・仕入帳等)
② 書類(決算書・契約書・領収書の発行控え等) |
オリジナルの電子データ又は出力した紙
|
| ❷ スキャナ保存 | 受領した契約書・領収書等 | スキャンした電子データ又は出力した紙 |
|
電子的にやり取りされた契約書・請求書・領収書等
|
オリジナルの電子データ
|

今回解説するのは上の表では❶の部分です。
「コンピュータを使って自社で最初から一貫して作成している帳簿書類を電子保存する方法」について解説します。
「自社が作成する」ということは、支払い時に受領する他社が作成した領収書などはここでは対象になりません。つまり経費になる領収書は❶の形態の電子保存の対象外です。
また「自社が最初から一貫してコンピュータで作成」というのは、作成過程の最初から最後まですべてコンピュータ内で処理している必要があるということを意味します。
したがって一部手書きで情報を付加するという方法は不可です。例えば、請求書を出力して社印を押してからスキャンしてという場合はこの規定では対象外になります。
電子保存の意義
この記事では「電子保存」や「電子的に保存」という言葉を使用しますが、それは、コンピュータで扱われるデータをコンピュータのハードディスクやUSBメモリやSDカード等の外部記録媒体、ファイルサーバー、クラウドサーバー等に保存することを意味しています。
例えば、パソコンで使用しているPDFファイルをそのパソコン上(ハードディスク)に保存しているケースや、クラウド会計サービスを利用していて、そのクラウド上の自社のアカウントに保存しているケースなどがこれに当たります。
パソコンを使用している場合に、そのパソコンからそのデータにアクセスできれば、そのデータは電子保存されていることを意味します。
なお、今回の記事は、話をわかりやすくするために、
(会計ソフトを使用していないで電子帳簿保存の適用を考えるのは現実的でないと思われるためです。)

コンピュータで自社が最初から一貫して作成する帳簿書類が電子保存できるのですね。
どのような帳簿書類が対象となるか詳しく教えてください。
電子帳簿保存法 対象となる帳簿書類

コンピュータを使って自社が一貫して作成した次の2種類の帳簿書類がここで説明する電子保存の対象となります。
- 国税関係帳簿
- 国税関係書類
国税関係帳簿と国税関係書類というカテゴリーに分けて整理するとすっきり理解できるので、ちょっと難しい用語が使われていますが、内容自体は難しくありません。この後にも登場する用語なので、ここで理解してください。
⒈ 国税関係帳簿
国税関係帳簿を簡単にいうと
「会計帳簿」とは、会計ソフトには必ずある「仕訳帳」や「総勘定元帳」やその他各種補助簿(例えば現金出納帳、預金元帳、売掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳)等を指します。
その国税関係帳簿については、税法でどのような帳簿を用意する必要があって、どのようなことを記載しなけらばならないかが詳細に決められています。法人税法を例に、どのように規定されているかを次のリンク先の記事で確認しましょう。

ここでは、電子保存できる対象は、仕訳帳、総勘定元帳、その他補助簿などの帳簿類であるということを確認できました。
続いては2つ目の国税関係書類です。
⒉ 国税関係書類
繰り返しになりますが、今回解説している電子帳簿保存の対象は、自社が作成している注文書、契約書、請求書、領収書などの取引の証拠書類となるものに限られます。受けとった場合の領収書等は対象になりません。
国税関係書類についても税法でどのような書類を保存すべきかが規定されています。法人税法を例に、どのような書類が保存すべき書類として挙げられているかを次のリンク先の記事で確認しましょう。
以上これらの国税関係帳簿と国税関係書類のうち、自社が最初から一貫してコンピュータで作成しているものであれば今回解説している電子帳簿保存の対象となります。

国税関係帳簿と国税関係書類かぁ、なんか難しいですね

それでは実務に即した形で整理してみましょう。
実務に即して電子帳簿保存の対象となる帳簿書類を確認してみよう
❶国税関係帳簿と国税関係書類のうちの決算関係書類と、❷決算関係書類以外の証拠書類となる国税関係書類の2つに分けて実務に当てはめてみると分かりやすいと思います。
❶は、会計ソフトで作成する仕訳帳や総勘定元帳等の会計帳簿と決算書がこれに当たります。一般的に流通している会計ソフトであれば、必ず機能としてありますので、会計ソフトで出力できる帳簿や決算書類がそれにあたります。
❷は、例えば請求書をPC内で作成して紙で印刷して相手方に交付している場合の請求書データであったり、あるシステムから領収書を出力して印刷して相手方に交付した場合のその領収書データがそれにあたります。
表にまとめるとこんな感じです。
| 国税関係帳簿 | 会計帳簿 | 会計ソフトマター | |
|---|---|---|---|
| 国税関係書類 | 決算関係書類 | 決算書・棚卸表 | |
| その他書類 | 請求書や領収書等 | 会計ソフト以外マター | |

なるほど、そう整理するとわかりやすいですね。
ちなみに請求書や領収書の電子データっていつ時点のデータを保存するんですか?

請求書等の相手に交付する書類は、相手に交付した時点のデータで、それ以外の書類はその性質に応じてその書類の作成を終えた時点のデータです。例えば棚卸表は、作成が完了した時のデータを保存します。
これまで解説してきたことを具体例で整理すると、コンピュータで自社が最初から一貫して作成した次の帳簿書類が電子保存の対象となります。
| 国税関係帳簿 | 現金出納帳、預金元帳、売掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳)等の帳簿類 | |
|---|---|---|
| 国税関係書類 | 決算関係書類 | 貸借対照表、損益計算書、棚卸表などの決算関係書類 |
| その他書類 | 注文書、契約書、請求書、領収書などの取引の証拠書類(発行控え) | |

なるほど。理解できました。
あと、自社で作成した請求書や領収書を出力して紙で交付するのではなく、メール送信した場合も電子保存ができるのでしょうか?

実はその場合は、冒頭の表でいうと③の形態の「電子取引情報の電子保存」に該当するので、そちらの規定に則って電子保存することになります。
ここでの電子保存は、自社が作成した請求書や領収書を紙に出力して交付するといった電子取引※に該当しないものが該当します。
電子帳簿保存法の電子取引については、次の記事で詳しく解説しています。

なるほど、わかりました。では電子取引を除いて自社が最初から一貫してコンピュータで作成している国税関係帳簿書類はそのまま電子データとして保存してOKということですね。

いいえ、実はそう単純ではありません。
これらの対象書類を電子保存するためには、ある一定の要件の下で保存する必要があります。詳しく説明していきます。
電子帳簿保存法 国税関係帳簿書類を電子保存するための要件

前述の2種類の国税関係帳簿書類について、自社が最初から一貫して次の4つの要件にしたがって保存する場合には、電子保存が可能となります。
- 正規の簿記の原則に従って記帳されていること
- 電子保存に関する事務手続を明らかにした書類の備付け
- 電子保存対象の国税関係帳簿書類を表示できるパソコンやタブレット等のコンピュータ、プリンタ、操作説明書が用意され、整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できること
- 国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じること
(要件1)正規の簿記の原則とは
1つ目の要件です。
企業会計原則の中で「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と謳われています。
一般的には、正確な会計帳簿の作成とその正確な会計帳簿に基づいて決算書を作成することが求められているとされています。そして正規の簿記の原則に従うとは以下の要件を満たすこととされています。
- 企業活動によって発生した取引すべてを網羅的に記録されていること(網羅性)
- 会計記録が検証できる証拠書類に基づいていること(検証可能性)
- すべての会計記録が継続的・組織的に行われていること(秩序性)
3つ目の秩序性については、会計ソフトを使用して国税関係帳簿と決算関係書類を作成していれば通常この要件を満たしていると考えられます。
会計ソフトに記録されているもの以外にも保存すべき帳簿がある場合は、その帳簿については、この秩序性を担保する必要があります。例えばクラウドサービス等のシステムを利用して注文書、契約書、請求書、領収書などを作成、発行している場合も通常はすべての会計記録をシステムが継続的・組織的に管理しているものと考えられます。
1つ目の網羅性、2つ目の検証可能性については、このことを意識してこれに則って経理する必要があるということに尽きます。
例えばエクセルで請求書を作成してPDF出力して印刷して相手方に交付している場合に、その請求書のデータがてんでんばらばらに保存されていて、ある請求書を確認するときにどこを探したらいいかわかならいということではまったく継続的・組織的に行われていないということになります。
実務では、自社が作成する帳簿書類について、正規の簿記の原則に従うためには、会計ソフトやその他ソフト、クラウドサービス等を使用することで効率的に実践できますので、自社でどのように効率的に帳簿書類のデータを電子保存できるかということについて一度洗い出しを行い、電子保存までの工程を組織的に構築してしまうということをするとこの電子保存をかなり楽に実践する近道になるでしょう。
(要件2)電子保存に関する事務手続を明らかにした書類の備付け
2つ目の要件です。電子帳簿保存法規則2条2項一号のニには
旨規定されています。
事務手続きの書類に記載すべき事項は次のものとされています。(取扱通達4−6⑷)
- 入出力処理(記録事項の訂正又は削除及び追加をするための入出力処理を含む。)の手順
- 日程
- 担当部署
- 電子データの保存等の手順

具体的にどのような書類を作成すればいいのかしら?
(入力担当者)
1 仕訳データ入出力は、所定の手続を経て承認された証票書類に基づき、入力担当者が行う。
(仕訳データの入出力処理の手順)
2 入力担当者は、次の期日までに仕訳データの入力を行う。
- ⑴ 現金、預金、手形に関するもの 取引日の翌日(営業日)
- ⑵ 売掛金に関するもの 請求書の発行日の翌日(営業日)
- ⑶ 仕入、外注費に関するもの 検収日の翌日(営業日)
- ⑷ その他の勘定科目に関するもの 取引に関する書類を確認してから1週間以内
(仕訳データの入力内容の確認)
3 入力担当者は、仕訳データを入力した日に入力内容の確認を行い、入力誤りがある場合は、 これを速やかに訂正する。
(管理責任者の確認)
4 入力担当者は、業務終了時に入力データに関するデータをサーバに転送する。管理責任者 はこのデータの確認を速やかに行う。
(管理責任者の確認後の訂正又は削除の処理)
5 管理責任者の確認後、仕訳データに誤り等を発見した場合には、入力担当者は、管理責任者の承認を得た上でその訂正又は削除の処理を行う。
(訂正又は削除記録の保存)
6 5の場合は、管理責任者は訂正又は削除の処理を承認した旨の記録を残す。
また、コンピュータ処理を例えば税理士などの他者に委託している場合には、これらの書類に代えて委託契約書等を備え付けておく必要があります。

このサンプルを自社に当てはめて編集することでなんとかこの要件はクリアできるでしょう。マイクロ法人の場合は、管理責任者はいないことになりますので、一人の確認で完結することになります。
(要件3)コンピュータ、プリンタ、操作説明書が用意され、整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できること
3つ目の要件です。電子帳簿保存法規則2条2項二号には次の2つの要件を満たす必要がある旨規定されています。
- 電子保存対象の国税関係帳簿書類を表示できるパソコンやタブレット等のコンピュータ、プリンタそして操作説明書を備え付ける
- ディスプレイの画面と書面に、整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できる
操作説明書はオンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能に操作説明書と同等の内容が組み込まれている場合には、それでよいことになっています。(電子帳簿保存法一問一答問9)
また書面への出力に当たっては、その形式については定めがないため、 画面印刷(いわゆるハードコピー)を印刷する形でもよいこととなっています。(電子帳簿保存法一問一答問11)
通常会計ソフトやその他のソフトを使っていればパソコンやタブレット等のデバイスを使っていますし、もしプリンタがなければ購入すればいいですし、操作説明書は通常はあるでしょうから、冊子であればそれを備え付けておき、コンピュータの中に入っているとか、オンラインにあるとすればそれをすぐに表示できる状態にしていればOKです。

コンピュータなしで事務をするケースは稀になってきているこのご時世であればかなりこのハードルは低いでしょう。
(要件4)国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じること
4つ目の要件です。電子帳簿保存法規則2条2項三号に
について規定されています。
ダウンロードの求めに応じるとは、税務調査官の求めの全てに応じた場合をいい、その求めに一部でも応じない場合はこの要件を満たすことになりません。(取扱通達4ー14)

調査時にダウンロードの依頼があれば、それに応じればよいというだけですのでこちらで何か手続きを踏まなければならない内容ではありません。
ただ裏を返せば電子帳簿保存法の適用を受けた場合は、ダウンロードを拒否する余地はまったくなくなるということを肝に銘じておく必要はあるかもしれません。
ただし、国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じることが不要となるケースが二つあります。
ダウンロードの求めがあったらこれに応じる要件が不要となるケース
| 対象書類 | 応じなくて良くなる条件 |
|---|---|
| 国税関係帳簿 | 優良帳簿の要件をすべて満たしているケース |
| 国税関係書類 | 検索機能の確保がされているケース |
優良帳簿の要件については後述します。
国税関係書類の条件の「検索機能の確保」を確認しましょう。
国税関係書類の検索機能の確保とは
電子帳簿保存法規則2条3項に次の2つの検索機能が確保されていれば、国税関係書類については、調査時のダウンロードに応じる要件が除外される旨規定されています。
- 取引年月日その他の日付を検索の条件として設定すること
- その日付の範囲を指定して条件を設定することができるものに限る。
取引年月日の検索に加えて日付の範囲を指定して検索できる必要があるので、例えば次のようにファイル名に規則性を持たせる方法では2つ目の要件を満たすことができません。
2022年4月1日発行の請求書 「20220401請求書.pdf」
方法としては国税庁が公表している各種規程等のサンプル(国税庁HP)に掲載されている電子取引の電子保存用で作成されている「電子取引に関するもの」の「(索引簿の作成例)(Excel/11KB)」(Excelファイル)を使うことで手間なくこの要件を満たすことができます。
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