新しい電子帳簿保存法で電子帳簿・スキャナ保存はこうなる【2022年(令和4年)以降適用】(暫定版)

スキャナ

これまで電子帳簿保存法の施行以来、その適用を受けることで大量に保存しなければならなかった帳簿や証拠書類を紙で保存することなく電子情報として保存することができるという大きなメリットがあったにもかかわらず、電子帳簿保存をしているという人に会ったことがなかった、というのが実際のところだったかと思います。

それはなぜか。

そのメリットより運用が面倒すぎてその運用コストの方がはるかに高かったため、電子帳簿を適用するくらいなら紙で保存するわ、という結論に至るケースが多かったためと思われます。

しかし令和3年度(2021年度)税制改正大綱で示された改正内容からすると、ついに、今度こそほとんどのケースで電子帳簿メリットがその運用コストを上回り、帳簿や証拠書類を電子的に保存することが一般的になる日が訪れるのではないかと思われます。

それでは、令和4年(2022年)以降、電子帳簿保存法の改正によって電子帳簿保存とスキャナ保存等はどう変わって行くのかを詳しく見て行くことにしましょう。

執筆時現在、実際に法改正が行われているわけでなく、また国税庁から新しい制度の運用についてのアナウンスもないので、現状知りうるところで説明をし、実際に情報が出てきたところで、リライトしていくこととします。

今回の記事は、話をわかりやすくするために、弥生会計やfreeeといった一般に流通しているいわゆる「会計ソフト」を使用している法人に対象を絞って解説することとします。(会計ソフトを使用しないで決算を組んでいる法人が多くあるとは考えにくい上に、会計ソフトを使用していないで電子帳簿保存の適用を考えるのは現実的でないと思われるため。)

電子保存の意義

この記事では「電子保存」という言葉を使用しますが、それは、コンピュータで扱われるデータをコンピュータのハードディスクやUSBメモリやSDカード等の外部記録媒体、ファイルサーバー、クラウドサーバー等に保存することを意味しています。

例えば、パソコンで使用しているPDFファイルをそのパソコン上(ハードディスク)に保存しているケースや、クラウド会計サービスを利用していて、そのクラウド上の自社のアカウントに保存しているケースがこれに当たります。

パソコンを使用している場合に、そのパソコンからそのデータにアクセスできれば、そのデータは電子保存されていることを意味します。

電子帳簿保存については、保存すべき国税関係帳簿書類の性質によって以下の3つの形態に分けて規定されています。

  1. コンピュータを使って自社が作成する帳簿書類の電子保存
  2. スキャナ電子保存
  3. 電子取引の取引情報の電子保存

まずは1つ目、コンピュータを使って自社で作成している国税関係帳簿書類について電子保存する方法から解説していくことにします。

パソコン等のコンピュータを使って自社が作成する帳簿書類の電子保存

自社が作成する帳簿書類という点がポイントです。

ここで取り扱う電子保存できる帳簿書類の具体例としては、会計ソフトで作成している会計帳簿や決算書そして自己が作成する注文書、請求書、契約書、領収書などが対象となります。

「自己が作成する」ですので、支払い時に受領する他社が作成した領収書などはここでは対象になりません。

具体的なイメージがぼんやり確認できたところで対象となる帳簿書類について詳しく見ていきましょう。

どのような帳簿書類を電子保存できるのか

自社が作成している次の2種類の帳簿書類がここで説明する電子保存の対象となります。

会社が保存しなければならない帳簿書類を、国税関係帳簿と国税関係書類というカテゴリーに分けて説明します。

⒈ 国税関係帳簿

法律上で国税関係帳簿という用語が使われるので、そのままこの用語を使いましたが、簡単にいうと会計ソフトで作成している一般的な会計帳簿のことを指しています。会計ソフトには必ずある「仕訳帳」や「総勘定元帳」やその他補助簿等を指します。

国税関係帳簿については、法人が保存すべきものとして詳しく規定されているので、詳細について必ず一度は以下のリンクを参照して確認しておきましょう。

青色申告法人の国税関係帳簿とは

白色申告法人の国税関係帳簿とは

ここでは、電子保存できる対象は、仕訳帳、総勘定元帳、その他の補助簿などの帳簿類であるということを確認しました。

続いては2つ目の国税関係書類です。

⒉ 国税関係書類

国税関係書類と呼ぶ時のその書類は、具体的には貸借対照表、損益計算書、棚卸表などの決算関係書類自社が発行する注文書、契約書、請求書、領収書などの取引の証拠書類となるものの2つを指します。

繰り返しになりますが、対象は注文書、契約書、請求書、領収書などの取引の証拠書類となる国税関係書類の中でも自社が作成しているものに限られます受けっとた場合の領収書等はここでは対象としていません。

国税関係書類の詳細についても、法人が保存すべきものとして詳しく規定されているので、詳細について必ず一度は以下のリンクを参照して確認しておきましょう。

青色申告法人の国税関係書類

白色申告法人の国税関係書類

以上2種類の自社が作成する国税関係帳簿書類に対し、次の要件を満たすことによって電子保存が可能になります。

電子保存するためにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。

この要件が実はかなりシンプルに変更されたので、実務的にハードルはかなり下がっていると思います。

国税関係帳簿書類を電子保存できる要件

前述の2種類の帳簿書類については、自己が最初から最後まで一貫して電子的に(✳︎1)次の3つの要件にしたがって作成する場合には、電子保存することが可能となります。

  1. 正規の簿記の原則に従って記帳されていること
  2. 前述の2種類の帳簿書類を表示できるパソコンやタプレット等のコンピュータ、プリンタ、操作説明書(✳︎2)が用意され、速やかに出力できること
  3. 国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じること

✳︎1 要するに作成過程の最初から最後まですべてコンピュータ内で処理している必要があるということ。一部手書きで情報を付加するという方法は不可です。(請求書を出力して社印を押してからスキャンしてという場合はこの規定では対象外になります。)

✳︎2 操作説明書:オンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能という形で操作説明書があれば可

要件は以上の3つで、税務署等への事前の申請も不要です。

なお、実際の規定には、上記3つの要件以外にも、電子計算機処理システムの概要書その他一定の書類の備え付けも要件に入っているのですが、自社開発のシステムやソフトでなければこの書類の備え付けは不要となりますので、一般的に流通している会計ソフトやサービスを使用する場合は、上記3つの要件を備えればOKとなります。

実務ではどうなるか

電子帳簿保存ができる要件はこのように決められていますが、実際に運用するとなったときにはどうなんだという実務での対応について確認していきましょう。

パソコン等のコンピュータを使って作成する帳簿書類の電子保存の対象となる帳簿書類は、実務では①国税関係帳簿と国税関係書類のうちの決算関係書類と、②決算関係書類以外の証拠書類となる国税関係書類の2つに分けると分かりやすいと思います。

①は、会計ソフトで作成する仕訳帳や総勘定元帳等の会計帳簿と決算書に分類がこれに当たります。

②は、例えば請求書をPC内で作成して相手方に差し入れている場合のその作成が完了した時の請求書のデータであったり、あるシステムから領収書を出力して相手方に交付した場合のその領収書のデータがこれに当たります。

こういったものが電子保存できる対象となりうるということです。

そのためにはどのような要件を満たす必要があるかというと、まず1つ目の正規の簿記の原則に従った記帳について確認していきましょう。

正規の簿記の原則とは

企業会計原則の中で「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と謳われています。

一般的には、正確な会計帳簿の作成とその正確な会計帳簿に基づいて決算書を作成することが求められているとされています。そして正規の簿記の原則に従うとは以下の要件を満たすこととされています。

  1. 企業活動によって発生した取引すべてを網羅的に記録されていること(網羅性)
  2. 会計記録が検証できる証拠書類に基づいていること(検証可能性)
  3. すべての会計記録が継続的・組織的に行われていること(秩序性)

3つ目の秩序性については、国税関係帳簿と決算関係書類については、会計ソフトを使用していれば会計ソフトにある帳簿書類はこの要件を満たしていると考えられます。

会計ソフトに記録されているもの以外にも保存すべき帳簿がある場合は、その帳簿については、この秩序性を担保する必要があります。例えばクラウドサービスを利用して注文書、契約書、請求書、領収書などを作成、発行している場合も通常はすべての会計記録をシステムが継続的・組織的に管理しているものと考えられます。

1つ目の網羅性、2つ目の検証可能性については、このことを意識してこれに則って経理する必要があるということに尽きます。

エクセルで請求書を作成してPDF出力して相手方に差し入れている場合に、その請求書のデータがてんでんばらばらに保存されていて、ある請求書を確認するときにどこを探したらいいかわかならいということではまったく継続的・組織的に行われていないということになります。

実務では、自社が作成する帳簿書類について、正規の簿記の原則に従うためには、会計ソフトやその他ソフト、クラウドサービス等を使用することで効率的に実践できますので、自社でどのように効率的に帳簿書類のデータを電子保存できるかということについて一度洗い出しを行い、電子保存までの工程を組織的に構築してしまうということをするとこの電子保存をかなり楽に実践する近道になるでしょう。

その他2つの要件(速やかな出力・調査時にダウンロード)

2つ目の「前述の2種類の帳簿書類を表示できるパソコンやタプレット等のコンピュータ、プリンタ、操作説明書が用意され、速やかに出力できること」については、通常会計ソフトやその他のソフトを使っていればパソコンやタブレット等のデバイスを使っていますし、もしプリンタがなければ購入すればいいですし、操作説明書は通常はあるでしょうから、冊子であればそれを備え付けておき、コンピュータの中に入っているとか、オンラインにあるとすればそれをすぐに表示できる状態にしていればよいということになります。

コンピュータなしで事務をするケースは稀になってきているこのご時世であればかなりこのハードルは低いかと思います。

3つ目の「国税調査官から質問検査権に基づいてダウンロードの求めがあったらこれに応じること」については、調査時にダウンロードの依頼があれば、それに応じればよいというだけです。

ただ裏を返せば電子帳簿保存法の適用を受けた場合は、ダウンロードを拒否する余地はまったくなくなるということを肝に銘じておく必要はあるかもしれません。

実務では、今後このように容易にパソコン等のコンピュータを使って自社が作成する帳簿書類の電子保存は可能であると考えられます。

例えば帳簿に関していえば、上記要件を具備している状態であれば、会計ソフトで閲覧できる状態で電子保存が行われていることになりますし、会計ソフトから保存すべき帳簿のすべてをPDF出力しておいて、そのファイルを保存している状態でもOKというかなり手軽に電子保存が実践できます。

自社が利用しているサービスやソフトを確認していただき、上記要件を満たしていれば、あるいは今後満たすことでこの制度は事前の申請など不要で令和4年(2022年)1月1日から開始できます。

なお、国税関係帳簿に関しては会計期間の開始当初から電子保存が始まっている必要があります。つまり会計期間の途中から電子保存に切り替えるということができませんので注意が必要です。帳簿に関しては最短で令和4年(2022年)1月1日以後開始事業年度から適用開始となります。

国税関係書類のスキャナ電子保存とは

続いて第二の電子保存の形態として、国税関係書類をスキャナで読み込んで電子保存する方法があります。

スキャナで読み込みとは

まずスキャナで読み込むとは、スキャナ機器や複合機(コピー機スキャナ機器一体のもの)で読み込んだもののほか、スマートフォンやデジタルカメラによる撮影もこれに該当します。

スキャナの詳しい説明については、以下をご参照ください。

電子帳簿保存法一問一答「「スキャナ」とは、どのようなものをいうのでしょうか。」(国税庁HP)

スキャナ電子保存の対象となるものとは

スキャナ電子保存の対象となるものは、「取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類そして自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」です。

厳密に言うと、以下のリンクで説明している国税関係書類のうち、決算関係書類を除いたもの(=「取引関係書類」)が対象となります。

青色申告法人の国税関係書類

白色申告法人の国税関係書類

スキャナ電子保存の要件とは

スキャナで読み込んだ国税関係書類は、どのような手続きを踏むことで電子保存ができるようになるのでしょうか。

その要件としては以下の3つを具備する必要があります。

⒈ タイムスタンプ等要件

スキャナ電子保存の要件の一つ目として、スキャンしたデータにタイムスタンプの付与またはその代替手続きを取る必要があります。

その要件は、書類の種類によりその内容が異なります。

資金や物の流れに直結する書類(以下「重要書類」と呼びます。)とそれ以外の書類(以下「一般書類」と呼びます。)により要件が異なってきます。

資金の流れに直結するものの例として領収書が挙げられます。お金を受領→領収書を交付という流れがあります。お金が動いてないので領収書が発行されることはないので資金の流れに直結していると言えます。

また納品書は、商品を納品する際に発行され、相手方に交付されるので、物の流れに直結していると言えます。

重要書類のスキャンと一般書類のスキャンでの要件の違いについては以下の表をご覧ください。

書類の具体例 電子保存要件
重要書類
  • 契約書
  • 領収書
  • 預り証
  • 借用証書
  • 預金通帳
  • 小切手
  • 約束手形
  • 有価証券受渡計算書
  • 社債申込書
  • 契約の申込書(定型的約款なし)
  • 請求書
  • 納品書
  • 送り状
  • 輸出証明書

これらの書類を発行する側はこれらの控え

その業務の処理に係る通常の期間(最長2ヶ月)を経過した後、おおむね7営業日以内にスキャンしてタイムスタンプ付与(またはタイムスタンプに代替する方法
一般書類
  • 検収書
  • 入庫報告書
  • 貸物受領証
  • 見積書
  • 注文書
  • 契約の申込書(定型的約款あり)

これらの書類を発行する側はこれらの控え

適宜(入力期間制限なし)スキャンしてタイムスタンプ付与(またはタイムスタンプに代替する方法

(参考 電子帳簿保存法一問一答「どのような書類がスキャナ保存の対象となりますか」

重要書類のスキャンと一般書類のスキャンでの要件の違いはスキャン+タイムスタンプ等をするのに期間制限があるかどうかになります。

重要書類については、その業務の処理に係る通常の期間(最長2ヶ月)を経過した後、おおむね7営業日以内にスキャン+タイムスタンプ等をする必要があるのに対し、一般書類はそのような期間的制限がありません。

タイムスタンプ付与またはタイムスタンプに代替する方法とは

スキャンした後に、タイムスタンプ付与またはタイムスタンプに代替する方法について説明します。

これまでスキャナ保存が普及しなかった理由の一つに、このタイムスタンプを付与しなければならなかったという点が理由として挙げられるかと思います。しかしタイムスタンプを付与するのが難しければ、その代わりにスキャナで取り込んだデータの訂正または削除した事実と内容を確認することができるシステム(訂正または削除を行うことができないシステムを含む。)で保存されていれば、タイムスタンプは不要になりました。

クラウドサービスに領収書をアップロードした場合に、そのデータ自体を直接ユーザが触ることはできません。クラウドサービスを通じて削除または上書き保存することになります。その際に削除訂正履歴が確認できればタイムスタンプをいちいち付与する必要がなくなります。

一般的には、自分でタイムスタンプを付与するのは現状とても容易ではないので、スキャナ電子保存をする場合は、タイムスタンプを付与できるサービスを利用するか、または保存したデータの削除訂正履歴が管理できるサービスを利用する必要があるということになります。

⒉ 一定のディスプレイとカラープランタを用意

電子保存されたデータが調査官が確認できる必要がありますので、ディスプレイとプリンタを備え付けておく必要があります。

具体的には、14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタ(拡大または縮小が可能で4ポイントの文字が認識可能)そして操作マニュアルを備え付けておく必要があります。

条文では以下のように表現されています。

国税関係書類に係る電磁的記録の保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をカラーディスプレイの画面及び書面に、次のような状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
イ 整然とした形式であること。
ロ 当該国税関係書類と同程度に明瞭であること。
ハ 拡大又は縮小して出力することが可能であること。
ニ 国税庁長官が定めるところにより日本産業規格Z八三〇五に規定する四ポイントの大きさの文字を認識することができること。
(電子帳簿保存法施行規則第3条⑸六)
この要件をクリアするのは、一般に流通している普段使用している14インチ以上のディスプレイとカラープリンタがあれば十分なはずです。

⒊ 検索機能の確保

電子保存したデータを、取引等の年月日、取引金額、取引先でコンピュータ上で検索することができること。

国税調査官の求めに応じて電子保存したデータをダウンロードさせる場合には、日付と金額の範囲指定と二以上の任意の主要な項目を組み合わせて検索できる機能を用意する必要がありません。逆を返せば、国税調査官の求めに応じない可能性がある場合には、日付と金額の範囲指定と二以上の任意の主要な項目を組み合わせて検索できる機能を用意する必要が出てきます。

こちらも実務では、利用するサービスが電子帳簿保存法のこの要件を具備しているか(電子帳簿保存法のスキャナ電子保存に対応しているか)を確認して使用すれば問題ないかと思います。あるいは、ファイルをクラウド上で共有できるサービスで、アップロードしたファイルをサービス上で取引等の年月日、取引金額、取引先の検索が可能であればそれで足りるということもありえるでしょう。

なお、実際の規定には、上記3つの要件以外にも、この電子保存に使用する電子計算機処理システムの概要書その他一定の書類の備え付けも要件に入っているのですが、自社開発のシステムやソフトでなければこの書類の備え付けは不要となりますので、一般的に利用されているサービスを使用する場合は、上記3つの要件を備えればOKとなります。

要件は以上です。この要件を備えていれば、事前の申請等が不要で令和4年(2022年)1月1日以降どのタイミングでも開始できます。

電子取引の取引情報の電子保存とは

電子保存の3つ目の形態です。

この形態はこれまでの2つの電子保存と少し趣が異なります。

ここで扱う電子取引の電子保存とは、取引に関して受領する、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される記録を電子的にやり取りする取引(電子取引)を行った場合に、この電子取引の記録を電子的に保存しなければならないというものです。

✳︎ 電子取引でそのやり取りされる電子的記録を便宜的に以下「電子情報データ」と呼びます。

最も異なる点は、これまでの2つの形態は、従前は紙のものだった国税関係帳簿書類を電子保存することができるようになるというものでした。そして電子保存をしなければ紙で保存すればよいというものでした。

しかしながら今回の電子取引に関していえば、終始一貫して電子的にやり取りされているので、もともと紙のものが存在しないものを電子的に保存しなければならないという点とデータを出力して紙で保存するということが認められず、必ず電子的に保存しなければならないという点です。

これまで認められていた電子取引でやり取りされた証拠となる取引情報データを出力して紙で保存するという方法は認められません。証拠書類となる保存すべき電子取引で取り交わされる取引情報データすべてを電子的に保存しなければなりません。

つまりすべての法人に関わりのあることであり、すべての法人がこの規定を知っておかなければなりません。電子取引でやり取りされる電子情報データについては、電子保存をしなければ知らなくてもいいというものではないということです。

これは令和4年(2022年)1月1日以後行う電子取引の取引情報についてすべからくすべての法人に適用されます。

それではこの形態の電子保存について一つ一つ詳細を確認していきましょう。

電子取引とは

「電子取引」とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項を電子的に行う取引をいいます。

電子取引の具体例として以下のような書類の授受または交付が行われる取引が挙げられます。

  1. 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
  2. インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
  3. 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
  4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
  5. 特定の取引に係るEDIシステムを利用
  6. ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
  7. 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。

電子帳簿保存法一問一答問2 電子取引とは、どのようなものをいいますか。

電子取引の電子保存の対象となる書類

電子取引の電子保存の対象となるものは、取引に関して受領する、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類と前述していますが、具体的にはこれまでも説明があった国税関係書類のうちの取引関係書類が今回の電子保存の対象となります。

青色申告法人の国税関係書類

白色申告法人の国税関係書類

電子取引の取引情報データを電子保存する方法

それでは、この電子的にやり取りされる取引関係書類をどのように電子保存しなければならないのでしょうか。

その要件は「訂正削除の防止策の措置」「ディスプレイ・プリンタ等の備え付け」「検索機能の確保」の3つです。

訂正削除の防止策の措置

電子取引の取引情報データが改ざん等の不正を防止する意味で次のうちからいずれかの措置を講ずる必要があります。

① タイムスタンプがされた取引情報データを受領する

発行者によりタイムスタンプが付された取引情報データを受領した場合は、特別受領者側で措置は不要です。

② タイムスタンプを付す

発行者によりタイムスタンプが付されていない取引情報データを受領した場合は、受領後その業務の処理に係る通常の期間(最長2ヶ月)を経過した後、おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付す方法。

③ 取引情報データの訂正削除を管理できるシステムを利用する

発行者によりタイムスタンプが付されていない取引情報データを受領した場合は、そのデータの訂正削除ができない、または訂正削除を行った記録が残るシステムを使用する。

④ 訂正削除の防止に関する規定の運用

正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理の規程を定め、この規程に沿った運用を行い、取引情報データの電子保存に併せてこの規程の備付けを行う。

どの程度の事務処理規定を定めればよいかは国税庁が公表している以下の例が参考になります。

電子取引電子保存事務処理規定例

電子取引電子保存事務処理規定例

(電子帳簿保存法一問一答 問19 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、規則第8条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定めて運用する措置を行うことを考えていますが、具体的にどのような規程を整備すればよいのでしょうか。より)

ディスプレイやプリンタ等の備え付け

スキャナ保存の場合同様、電子取引の取引情報データを調査官が確認できる必要がありますので、ディスプレイとプリンタを備え付けておく必要があります。

具体的には、14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタ(拡大または縮小が可能で4ポイントの文字が認識可能)そして操作マニュアルを備え付けておく必要があります。

検索機能の確保

スキャナ保存の場合同様、電子取引の取引情報データを、取引等の年月日、取引金額、取引先でコンピュータ上で検索することができる必要があります。

国税調査官の求めに応じて電子取引の取引情報データをダウンロードさせる場合には、日付と金額の範囲指定と二以上の任意の主要な項目を組み合わせて検索できる機能を用意する必要がありません。逆を返せば、国税調査官の求めに応じない可能性がある場合には、日付と金額の範囲指定と二以上の任意の主要な項目を組み合わせて検索できる機能を用意する必要があります。

この検索機能に関しては、前々事業年度の売上高が1,000万円以下である場合で、国税調査官の求めに応じて電子取引の取引情報データをダウンロードさせる場合には検索要件はすべて不要になります。

なお、実際の規定には、上記3つの要件以外にも、この電子保存に使用する電子計算機処理システムの概要書その他一定の書類の備え付けも要件に入っているのですが、自社開発のシステムやソフトでなければこの書類の備え付けは不要となりますので、一般的に利用されているサービスを使用する場合は、上記3つの要件を備えればOKとなります。

まとめ

いかがでしょうか。電子帳簿保存、できそうじゃないですか。

電子取引の電子情報データに関してはできそうではなくで、2022年以降はしなければなりません。

これまでの電子帳簿保存は要件が複雑すぎて制度全体を理解する気にもならないというのが本音というところだってのではないでしょうか。

しかし令和3年度の改正でかなりシンプルに、そして実践しやすくなったと思います。

やっと電子帳簿保存によるメリットをみんなが享受できる日が2022年についに訪れるのではないでしょうか。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表、税理士、元国税専門官 海野 耕作

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