飲み代は経費になるの?福利厚生費?交際費?自腹?元国税・税理士が解説

 

乾杯の絵

 

飲み会の費用が、会社の経費になるのか?

なるとしたら何の費用になるのか?

費用にするには注意点がないか?

どんなものを経費にしてはいけないのか?

飲み会の領収書を見ながらこんな疑問を抱くことがあるかもしれません。

今回は飲み会の費用に焦点を当てて中小企業(法人)向けに飲み代にまつわる税務について元国税調査官・税理士が解説したいと思います。

資本金が1億円以上あるような会社さん用には、書いていませんので、その点を予めお伝えしておきます。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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飲み会代は何の費用になるのか?

飲み会代の領収書があって、それを法人税法上で分類するとすれば、通常次の3つの費用に分類されます。

  1. 福利厚生費
  2. 交際費
  3. 給与

法人の税金計算上次の順番で会社に有利になります。

①福利厚生費  ②交際費  ③

福利厚生費が一番有利で、給与が一番不利になります。

それではまず、飲み会代が会社に一番有利である福利厚生費に該当するかどうかを見ていくことにしましょう。

飲み代が福利厚生費に該当するか

福利厚生費とは

法人税法上、福利厚生費とは、かくかくしかじかである。という明文規定はありません。

しかしながら、飲食の費用に関連してこういったものは福利厚生費等に該当するという規定が以下のとおり2つあります。

創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用

専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

国税庁タックスアンサー No.5261 交際費等と福利厚生費との区分)

この飲食に関連する福利厚生費に関連するであろう規定はこの2つしかりません。

この規定もかなりピンポイントなので、飲み代を福利厚生費かどうかを広く判断するのはかなり難しいといえます。

これらの規定から少なくとも言えることは、

  • 従業員に対して概ね一律に行われること
  • 通常の飲食に要する費用

である必要があるということです。

「従業員に対して」なので、他社の会社の人がいれば、福利厚生費にはなりません。

「概ね一律」ということですので、一部の従業員だけというのは難しいでしょう。これは、会社の規模や業態によっては、全従業員でなくてもよいと解されています。

規模の大きい会社であれば、部署ごとの忘年会などが考えられるかと思います。

しかしながら会社が本店事務所のみで、従業員10人程度であれば全員に声をかけるのは難しくないので、部署ごとというのは難しいと思われます。

「通常の」というのは、社会の一般的な感覚的で通常という意味ですので、これも曖昧です。

ちなみに10か月間で53回の従業員の慰労のための飲み会代は福利厚生費とならず交際費だという判例があります。つまりやりすぎだろ!という感覚です。

1人当たり約2.2万円~2.9万円の慰安のための行事(旅行でない)も交際費だという判例もあります。これは高すぎんだろ!という感覚です。

福利厚生費とする判断基準

福利厚生費の判断が難しい

ではどのくらいなら良いのか?

法令上の明文の基準はありませんので、判断は極めて難しいと言えます。

判例でも、法人の規模や事業状況等を踏まえた上で、 行事の目的、参加者の構成、開催頻度、規模及び内容、効果、参加者一人当たりの費用額等を総合して判断するのが相当である。と言っていますので、簡単には判断できません。

では、どうしたらいいのか。

創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等の祝賀会で、従業員等に概ね一律に与えた通常かかる程度の飲食代であることが明らかな場合は、福利厚生費にしましょう。

え?飲み代はほとんど福利厚生費にはならない?と思うでしょうが、それで構いません。

次が大事ですが、通常の中小企業の場合、福利厚生費でも交際費でも税金の負担は変わりませんので、悩むだけ時間の無駄です。

福利厚生費でも交際費でもどちらでも同じ場合

以下の条件に当てはまる会社は、福利厚生費であろうと交際費であろうと税金の計算上すべて費用になる(法人税法上は損金になるといいます)。

  • 期末の資本金の額が1億円以下
  • 交際費関連の支出金額が年間800万円以内

世の中では資本金が1億円以下の会社が大多数であって、交際費を800万円以上もかけている会社は相当稀れでしょうから、大多数の中小企業にとっては、福利厚生費と交際費で悩む意味は、実は実務ではありません。

どうせ税金の計算では同じになりますので。

これまでの福利厚生費の件はなんだったんだという感じですが、福利厚生費の判定が難しいというのと、難しいけど悩んでもほぼ意味がないんだというのを理解いただければと思います。

それでは、次に移ります。交際費とは一体何かを確認していきましょう。

飲み代が交際費となるか

交際費とは

交際費というと、得意先を接待するというイメージが湧いてくるかと思いますが、税法上の交際費は一般的なものより幅広いといえます。

法律では次のように規定されています。

交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの

租税特別措置法第61条の4④

交際費とは、どんな支出なのかという話はかなり長くなりますので、次のリンクだけ参考としてお示しして、飲食に関わるものに今回は焦点を絞って解説していきたいと思います。

(参考)交際費の範囲(国税庁HP)

交際費の損金不算入

先ほども少し言及しましたが、交際費には税金計算上注意すべき点があります。

帳簿上で、交際費と経理したとしても、法人税の計算上すべて損金※(税法上の費用)になるわけではありません。

 

※損金については、次の記事で解説しています。

損金の意味とは?損金不算入だけ注意すれば実務はほぼOK【元国税税理士が図解解説】
法人税法の独特の用語に「損金」という言葉があります。これがなぜ重要かというと法人税法には損金不算入という規定があるからです。実務で最も注意が必要なのも損金不算入です。法人税の申告をする上で不可欠な知識「損金不算入」をこの記事でマスターしましょう。

 

現行の税法では、簡単に説明すると、次のような制限がかけられています。

⑴ 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人

世の中の大多数の会社はこちらに該当するかと思います。

次のいずれか少ない金額が損金(税法上の費用)になりません。

① 交際費のうち年間800万円を超える金額

② 交際費のうち、飲食費用の50%超の金額

 

⑵ 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円超である等の法人

交際費のうち、飲食費用の50%超の金額

 

今回は中小企業向けの記事ですので、上記⑴だけを見ていきます。

①と②を比較して有利な方を選択します。

②が有利になるケースというのは、かなり稀です。なぜなら交際費に該当する飲食費用だけで1,600万円超の場合②を選択することになります。そのような会社が中小企業でどれほどあるか疑問ですので、②の規定はこのようなものがある程度で、実務ではほとんど無視してしまっていいと思います。

したがいまして、一般的な中小企業の場合は、800万円までは交際費として会社の経費にして問題ないという理解でいいかと思います。

交際費の金額が800万円に達しないような場合は、福利厚生費か交際費で悩むのは時間の無駄なので、交際費として経理しておけば、まったく何の問題もないということが理解いただけると思います。

どんな飲み代が交際費となるのか

話を戻しまして、飲み代が交際費になるかどうかのポイントは2つです。

交際費となる条件

条件1 相手が誰か

その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対するものであること

条件2 目的は何か

接待、供応(酒や食事を出して人をもてなすこと)、慰安のため

得意先や仕入先など、他社の仕事上の関係者を接待する目的での飲み代は、この条件を2つとも満たしますので交際費になります。

社内交際費はOK

条件1の「その他事業に関係のある者等」というところがポイントで、これには「法人の役員、従業員とその親族」も該当します。

したがいまして、社内での飲み代も基本的には交際費になり得ます。

目的として、社内の従業員の慰労目的でお酒や食事を出してもてなしたり、接待するということであれば交際費になります。

小規模の会社で、社長が従業員を慰労する目的で、数人連れて居酒屋に行くというのは、社長のポケットマネーではなく、交際費として会社の経費とすることができるわけです。

個人的な支出はダメ

「その他事業に関係のある者等」なので、事業に関係のない者に対する接待等では、条件1に反しますので交際費には該当しません。

例えば、社長と家族だけで飲食をした費用は、交際費になったりはしないわけです。

事業と関係ない友人と行った飲み代や、社長一人での飲み代も交際費になりません。

当たり前の話ですが、事業に関係ない支出であるため、そもそも会社の経費とはなりません。

もしこのような個人的な飲み代が、会社の経費に入っていた場合は、どのように処理すればよいのでしょうか。

今度は、給与と交際費の区分が必要になってきます。

飲み代が交際費でなく給与となる場合

税法では、次のように規定しています。

61の4(1)-12 従業員等に対して支給する次のようなものは、給与の性質を有するものとして交際費等に含まれないものとする。

機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

措置法通達61の4(1)-12⑶

法人の業務のために使用したことが明らかでない場合は、給与になります。

社長等の役員が使った法人の業務と無関係の個人的な飲み代であった場合は、役員賞与ということになります。

役員賞与となると、次の理由でその分の税金の負担が発生します。

  1. 賞与なので、源泉所得税が追徴される
  2. 役員賞与は事前に届け出ているものでないと損金※(税法上の会社の費用)とならないので、その分所得が増える
  3. 消費税が課税仕入れとならない(消費税を原則課税で納税している場合に限る)

まとめ

ポイントをまとめます。

中小企業で交際費の支出が800万円に達さない状況では、飲み代で福利厚生費か交際費かを悩むのは無駄であり、迷ったら一律交際費とする。

交際費は社外のものの接待だけでなく、会社内の人間だけで飲みに行っても、接待慰労目的であればその費用は交際費になる。

会社の業務に関係ない飲み代は、経費にならない。帳簿に載っていたら使った者の給与になる。

今回は、交際費の制度的な詳しい説明は、省きました。多くの中小企業(資本金1億円以下、交際費の支出額が800万円以下)では、あまり詳しく知っていても意味がありませんので、焦点を絞って解説しました。

 

この記事は執筆時点の法令等に基づいています。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表、税理士、元国税専門官 海野 耕作

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