元国税調査官・税理士による、消費税についてよく知らない、専門家でない一般の方に向けた記事です。
すべての方に向けて網羅的に説明すると市販の参考書のようにわかりにくいものになりますので、中小企業向け、一般の方向けに的を絞ってわかりやすく解説します。
住宅の賃貸の消費税の取り扱い
住宅の賃貸には、消費税はかかりません。
消費税法上は、非課税取引に分類されます。
(参考)非課税取引について、詳しく知りたい場合は次の記事を参考にしてください。
しかしながら、住宅の賃貸であればすべてが消費税がかからないというわけではありません。
住宅の賃貸が非課税となるには、次の条件があります。
非課税となる最も重要な条件
居住用の貸付けであることが明らかにされている場合
住宅の賃貸借で消費税が非課税となるのは、居住用の貸付けであることが明らかにされている場合に限られます。
居住用の貸付けであることが明らかにされているケースとは、次のようなケースが考えられます。
契約書において居住用であることが明らかなケース
賃貸借の契約において、居住用であることが明記されていることがありますので、その場合は、居住用に貸付られることが明らかであることが容易に判断できます。
賃貸借の状況から居住用であることが明らかなケース(令和2年10月1日以降の取引から適用)
次のようなケースが国税庁が公表している消費税法の基本通達で挙げられています。
(1) 住宅の賃借人が個人であって、その住宅が人の居住用に使われていないことを賃貸人が把握していない場合
(2) 住宅の賃借人がその住宅を第三者に転貸している場合であって、その賃借人と入居者である転借人との間の契約において居住用であることが明らかにされている場合
(3) 住宅の賃借人がその住宅を第三者に転貸している場合であって、その賃借人と入居者である転借人との間の契約において貸付けに係る用途が明らかにされていないが、その転借人が個人であって、その住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合
この取り扱いは消費税が改正されて新たに追加されたもので、令和2年10月1日以降行われる取引から適用されることとなります。
これまでは契約書に居住用、住居用、住宅用など、居住用であることを明記することで消費税がかからないという取り扱いでしたが、令和2年の消費税法改正で賃貸借の状況から居住用であることが明らかなケースまで非課税取引となることになりました。
貸付期間が1ヶ月以上
非課税とするには、契約期間が1ヶ月以上である必要があります。
契約の段階で1ヶ月に満たない期間で賃貸することを約している場合は、消費税がかかります。
一般的にいうマンスリーマンションは、契約が1ヶ月単位で行われていれば消費税はかからないということになります。
旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に該当しない
旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合は、非課税とはならず、消費税がかかります。
上記の例で、対象のマンスリーマンションが、旅館業に該当している場合は、消費税はかかることになります。
マンスリーマンションの形態によっては、旅館業に該当する場合も該当しない場合も両方あるようです。
その他の注意点
店舗等併設住宅の取り扱い
住宅と店舗又は事務所などの事業用施設が併設されている建物を一括して賃貸する場合には、住宅として貸し付けた部分だけが非課税となります。
(注) この場合は、家賃を住宅の貸付け部分の金額と事業用の施設の貸付け部分の額とに合理的に区分することになります。
家賃の範囲
家賃には、月決め等の家賃のほか、敷金、保証金、一時金等のうち返還しない部分やいわゆる共益費も含まれます
まとめ
住居の賃貸に関して、重要な部分をまとめました。
住宅の賃貸借は基本的には非課税取引で消費税はかかりません。
またこれまでそのことは知っていたという方は、これまで住居の賃貸の消費税の取り扱いで注意を要する点は、契約書に居住用、住居用、住宅用など、居住用であることを明記することで消費税がかからないという取り扱いでしたが、令和2年の消費税法改正で賃貸借の状況から居住用であることが明らかなケースまで非課税取引となることになりますので、賃借人が個人で大家さんに事業用で使いますよと伝えていない場合は、基本的には非課税取引になるということになるということに注意が必要です。
事業用として使用することが契約書で明記されているか、大家さんに事業用で使うことの同意を得ていない場合は、居住用になるということですので、非課税取引となる賃貸借が従来よりも広がったということに注意が必要となります。
執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作
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