
これまで3年自分で法人の確定申告をしてきて、繰越欠損金も使い切って、いよいよ黒字転換して法人税を納めることになりそうなんだが、何かよい法人税の節税策はないかなぁ?
30万円未満の固定資産を一時の損金にするなど、よく知られている節税策はやってきているということですね。
倒産防止共済(セーフティ共済)はご存じですか?
いいえ、初めて聞きました。
倒産防止共済(セーフティ共済)による節税策は、生命保険とは比べものにならないほど優秀なものです。青色繰越欠損金や30万円未満の固定資産の損金算入等、青色申告により一般的に行われる節税策の次にまず検討すべき節税策と言えます。
目次
1 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)制度の特徴

まず、中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)制度の概要から簡単に確認していきましょう。
1-1 制度の概要
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)制度は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
取引先が倒産した場合は、その事実が確認されれば無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れができ、その掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)制度のポイントを端的に言うと次の4つを挙げることができます。
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の4つのポイント
無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
取引先が倒産後、すぐに借入れできる
取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れることができます。掛金を損金、または必要経費に算入できる
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を※損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。解約手当金が受けとれる
共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります。
(出典:中小機構ホームページ)
※損金について、よくわからないという方は次の記事でわかりやすく簡潔に解説していますので、そちらを確認してから続きをお読みください。損金についてよくわからないとこの先を読んでもしっかり理解することが難しくなります。
1-2 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、一般の生命保険よりも優れている
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、取引先が倒産したという不測の事態に備えるというものですが、同様の性質のものでは生命保険会社の節税商品というものがあります。生命保険の掛金も商品によりますが、一定割合を損金または必要経費にでき、解約返戻金が受け取れます。中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、この生命保険会社の商品に比べて圧倒的にパフォーマンスがいいのです。
青色繰越欠損金や30万円未満の固定資産の全額費用計上といった一般的な節税策の次に節税を考えた時に、生命保険商品よりもまずはセーフティ共済を考えるべきです。
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の何が凄いのかを説明しましょう。
次のような条件が揃っているのです。
- 掛金の全額が損金または必要経費になる
- 解約返戻金が40ヵ月以上の納付で掛金総額の100%が戻る
- 翌年1年間の支払額を支払った年度の損金または必要経費にできる
生命保険でこのパフォーマンスを出せる商品はまずありません。
ただし、掛金には上限があり、月額20万円で、積立限度額が800万円までという規模の面での限界があります。
解約はいつでもできます。
任意で解約した場合の返戻率は次のとおりで、40ヵ月(3年4ヶ月)以上で100%と脅威的にすごいです。
| 掛金納付月数 | 任意解約時の返戻率 |
|---|---|
| 1ヶ月〜11ヶ月 | 0% |
| 12ヶ月〜23ヶ月 | 80% |
| 24ヶ月〜29ヶ月 | 85% |
| 30ヶ月〜35ヶ月 | 90% |
| 36ヶ月〜39ヶ月 | 95% |
| 40ヶ月以上 | 100% |
逆に40ヵ月未満の解約で元本割れしますので、この点は注意が必要です。
1-3 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の掛金・解約返戻金の税務上の取り扱い
掛金が法人の場合は、全額損金になり、個人事業主の場合は必要経費になりますが、逆に解約返戻金は、法人の場合は、全額益金(法人税の利益)になり、個人事業主の場合は事業所得の収入金額になります
| 法人 | 個人事業主 | |
|---|---|---|
| 支払った掛金 | 損金 | 必要経費 |
| 受け取った解約返戻金 | 益金 | 収入 |
掛金が一時的費用になっても解約したら返戻金が利益になるのなら時期の問題だけで結局トータルで考えたらプラスマイナス0で、節税とは言えないのではないですか?
単純に考えると、そうなのですが、税務の実務では、決してそう単純なことではないんです。
では、次のケースを考えて見ましょう。
2 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の節税イメージ

2-1 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の節税シナリオ
こんな場面を考えてみましょう。
設立から3期目、事業がやっと軌道に乗り、売上は右肩上がりで気づいたら税引前利益が500万円。
仮に実効税率を3割として計算すると今期(3期目)は150万円の納税になります。やっと軌道になったばかりで、こんなに納税?困った。
その後、当初はライバルもなく、売上を伸ばしていたが、好況につき大手企業の参入があり、競争が激化し、売上が激減。とうとう6期目には赤字に転落。
このような設定の下、以下の表のような推移を辿ったとします。
倒産防止共済なし
| 3期 | 4期 | 5期 | 6期 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 税引前利益 | 500万 | 500万 | 150万 | -600万 | 550万 |
| 税金 | -150万 | -150万 | -45万 | ※45万 | 300万 |
| 手元資金 | 350万 | 350万 | 105万 | -555万 | 250万 |
※繰戻還付
話をわかりやすくするために税引前利益がすべて現金の裏付けがあるとしています。そうすると、税引前利益から税金を差し引くと手元資金となります。
次にセーフティ共済の掛金を年間240万円を支払っていた場合を考えてみます。つぎの
倒産防止共済あり
| 3期 | 4期 | 5期 | 6期 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 税引前利益 | 500万 | 500万 | 150万 | -600万 | 550万 |
| 倒産防止共済掛金 | -240万 | -240万 | -120万 | ※600万 | 0万 |
| 掛金控除後利益 | 260万 | 260万 | 30万 | 0万 | 550万 |
| 税金 | -78万 | -78万 | -9万 | 0万 | 165万 |
| 手元資金 | 182万 | 182万 | 21万 | 0万 | 385万 |
※倒産防止共済40ヵ月支払い、満額の解約返戻金を受け取る
これらの2パターンを節税という観点から比較検討してみましょう。
倒産防止共済ありとなしを比較
倒産防止共済なしは税金を4年間で300万円支払い、手元資金は4年で250万円残りました。
倒産防止共済ありの方は税金を4年間で165万円支払い、手元資金は4年間で385万円残りました。
| 倒産防止共済なし | 倒産防止共済あり | 節税金額 | |
|---|---|---|---|
| 税負担の額(4年合計額) | 300万円 | 165万円 | 135万円 |
| 手元資金 | 250万円 | 385万円 | 135万円 |
設定したシナリオでは倒産防止共済を使った場合は、節税金額が135万円となり、手元資金が135万円が増えた計算になります。
払った掛金が合計600万円で受け取った返戻金も600万円なのに、このケースでは135万円の節税効果があるんですねぇ。
ここでのポイントは赤字の時に返戻金を受け取っているという点です。
赤字が600万円であれば、返戻金600万円が収入となっても利益は-600 +600 = 0となり、税金がかからないのです。
2-2 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)による節税の注意点
でも、ずうっと黒字続きだと結局節税にはならないんじゃないかな?
解約返戻金の上限が800万円ということを考えれば、社長の退職金を支給する時には金額が多くなりがちですから、800万円の赤字が出る可能性はかなりあると思いますよ。
なるほどー
退職金を支給する時には費用が大きくなるので、そこで解約返戻金を受け取ってこの利益分を吸収してしまおうということですね。
倒産防止共済による節税は、あくまで利益の繰り延べに過ぎません。そのため、前述のとおりずっと利益が出続ける企業にとっては節税にはなりえません。
解約のタイミングでは、法人税の税率や事業税の税率が逆に高くなるという場合も考えられます。
中小企業の場合は税率が所得が800万円までは15%でそれ以上は23.2%(令和4.4.1以後開始事業年度の場合)、事業税も所得が400万円以下、800万円以下、800万円超で税率が高まります。
こういうことを考慮せずに解約すると、税率が逆に高まって結果的に節税にならないなんてことになってしまいます。
あくまで黒字の時に加入し、赤字で解約しないとこの節税策は機能しないことにご注意ください。
利益が出ているが売掛金ばかりで利益に資金の裏付けがないような場合には、掛金としてキャッシュは出ていきますので、節税のためと言って資金的に余裕がないのに出金しては手元資金がなくなって行き詰まるということもありえます。
節税といっても当座の資金に苦しんでは元も子もありませんので、キャッシュが出ていくことを念頭に置いて掛金の設定または加入の可否を決定しましょう。
倒産防止共済(セーフティ共済)による節税の注意点
- 黒字の時に加入し、赤字の時に解約しないとこの節税策は機能しない
- 節税のことだけに目を奪われて、運転資金が不足しては元も子もない
節税ということを離れて本来の不確実性に備えるという文脈でも、企業を取り巻く環境は不透明なわけです。今調子が良くてもいつ事態が急変するかわかりません。調子の良い時にこそうまく資金をプールして、いつ襲ってくるかわからない、その不確定な未来に備えるという姿勢こそ、企業を健全で息の長いものにするのではないでしょうか。
3 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の掛金の税務上の処理方法
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