消費税の内外判定は4つのパターンで判定|素人のための消費税1

内外判定

消費税についてよく知らない、専門家でない一般の方に向けた記事です。

すべての方に向けて網羅的に説明すると市販の参考書のようにわかりにくいものになりますので、中小企業向け、一般の方向けに的を絞ってわかりやすく解説します。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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はじめに

ある商業上の取引に消費税がかかるかどうか考える時に、まずはその取引が国内で行われたかどうかが重要なポイントになります。

実は消費税は「国内において事業者が行なった取引に」課することになっています。

国外で行われた取引ということになると、「国内において」に当てはまらないため、消費税がかからないということになります。

消費税の内外判定

ある取引が「国内において」行われたかどうかの判定は、取引の形態によって次の区分に応じて行われることになります。

資産の譲渡または貸付けの場合

原則

譲渡または貸付けが行われる時に、その資産が所在していた場所が国内の場合は「国内取引」

つまり、物を販売する場合には、販売するときに国内にある商品を売買しないと「国内取引」にならず、そもそも消費税がかからないということになります。

したがって、国内の事業者が、国内の他の事業者に対し、国外にある資産の譲渡又は貸付けをした場合には、この譲渡又は貸付けは国外において行われたこととなり、消費税がかからないということになります。

ただし、対象の資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券等の場合は例外で原則に関わらず、政令で定められた場所で判定します。→政令の6条1項参照

役務の提供の場合(電気通信利用役務の提供を除く)

役務の提供(=サービスの提供)の場合は、原則

役務の提供が行われた場所が国内の場合は「国内取引」

例えば、ある会社がシステムの開発の一部を外注したとします。フリーランスとして国内で働いているエンジニアに外注したとすれば国内取引になりますし、ベトナムの開発チームに外注したとすれば国外取引になります。

ただし、例外があります。

次の表の役務の提供の場合は、その判定場所は表のとおりになります。

例外の役務の提供 判定場所
国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送 国内取引
国内及び国外にわたって行われる通信 国内取引
国内及び国外にわたって行われる郵便又は信書便 国内取引
保険 保険業を営む者(保険代理業を除く)の保険の契約の締結にかかる事務所等の所在地
情報の提供 情報提供を行う者の情報の提供に係る事務所等の所在地
設計 設計を行う者の設計に係る事務所等の所在地
専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査、企画、立案、助言、監督、検査に係る役務の提供で生産設備等の建設又は製造に関するもの 生産設備等の建設又は製造に必要な資材の大部分が調達される場所
上記以外で国内及び国外にわたって行われる役務の提供で役務の提供が行われた場所が明らかでないもの 役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地

この表からすると、日本発の国際線や国際通信、国際郵便はすべて国内取引になるということになります。

平成27年9月30日までは役務の提供の内外判定はこれでよかったのですが、平成27年10月1日以後行う役務の提供については、次のケースを考える必要があります。

電気通信利用役務の提供の場合

電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を 「電気通信利用役務の提供」といいます。

この電気通信利用役務の提供の場合は、前述の内外判定にかかわらず、原則

役務の提供を受ける者の住所等(個人の場合には住所又は居所、法人の場合には本店又は主たる事務所の所在地をいいます。)

これまでなら、役務の提供を行う者の事務所等の所在地であったところも、反対に役務の提供を「受ける」者の住所等となります。

googleやyahooを使ったインターネット広告もそのサービスを受けている会社が日本にあれば原則国内取引に該当することになります。

(例外)国内事業者が国外事業所等で受ける「事業者向け電気通信利用役務の提供」のうち、国内以外の地域において行う資産の譲渡等のみに要するものである場合は、国外取引。 また、国外事業者が恒久的施設で受ける「事業者向け電気通信利用役務の提供」のうち、国内において行う資産の譲渡等に要するものである場合は、国内取引。

金銭の貸付け等の場合

以下に掲げる金銭の貸付け等については、その貸付け等を行う事務所等の所在地が国内であれば「国内取引」となります。
  1. 利子を対価とする金銭の貸付け
  2. 利子を対価とする国債等の取得
  3. 利子を対価とする国際通貨協定に規定する特別引出権の保有
  4. 預金又は貯金の預け入れ
  5. 収益の分配金を対価とする集団投資信託、法人課税信託、退職年金等信託、特定公益信託等
  6. 給付補てん金を対価とする掛金の仕組み
  7. 無尽に係る契約に基づく掛金の仕組み
  8. 利息と対価とする抵当証券の取得
  9. 償還差益を対価とする国債等又は約束手形の取得
  10. 手形の割引
  11. 金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)

たとえば国内の会社が保有する外国預金口座の預金利息について考えてみましょう。

外国預金口座を開設しているということは、金銭をその外国の金融機関に貸し付けていることになるので、上記1.に該当します。そしてその貸し付けている会社の事務所が国内にあるので、国内取引に該当します。

まとめ

内外判定はまず原則に当てはめて判定できるようにします。

つまり、資産の譲渡や貸付けであれば、その対象の資産が取引時にあった場所で判定し、サービスであればサービスが行われた場所で判定します。

その後、その取引が例外に当てはまっていないかを確認し、当てはまっていれば例外で判定し、当てはまっていなければ原則で判定するという手順が効率的です。

これを繰り返すことによって内外判定の感覚が自然と養われていくことと思います。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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