プロが解説!2024年電子帳簿保存法の義務化に対応する方法4選

プロが解説!2024年電子帳簿保存法の義務化に対応する方法4選アイキャッチ
悩む会社員 副業している

請求書や領収書を電子保存することが義務化すると聞きました。
いったいどういうことでしょう?

悩む女性 フリーランス

これまで紙で保存していた取引の証拠書類が紙で保存することができなくなると聞きました。私は関係ないですよね?

結論から言うと、事業者全員が対応を迫られます。
冒頭で事の重大さを理解しましょう。
電子帳簿保存法という法律が改正されたことにより2024年1月からこうなります。

弁護士 税理士

2024年1月から電子帳簿保存法の改正ですべての事業者はこうなる

事業を営んでいる個人事業主、法人は、例外なく

2024年1月から

請求書や領収書等をメールやシステムで電子的に受領した場合は、

そのまま電子的に保存しなければならない。(紙で出力して保存は

そして保存の仕方に一定の要件がある。(原則の要件がすべて免除される猶予措置あり。紙保存はやっぱり。)

弁護士 税理士

冒頭で絶対に知っておくべきは、事業を営んでいる事業者の全員が、この電子保存をしなければならないという点です。
全員が適用されると言う点で、2024年以降は例外はありません
「私は関係ない」という人は事業を営んでいる人の中では誰一人いません。

事業者全員がこの電子保存の義務化の影響を受けます。繰り返しますが、いかなる場合も紙での保存は認められません

全事業者に関係のあるこの問題にどう対処すべきかということが最大の関心事になると思います。

悩む会社員 新米社長

会計ソフトの会社からこんなメールが届きましたー!

「2024年1月から領収書等をデータでやりとりした場合には、紙の保存ができなくなり、電子保存が義務化されます。
電子帳簿保存法の保存の要件も細かく設定されており、その要件を満たせるよう準備を行う必要があります。
確認・準備がまだの方は、年末までに早急に対応しましょう。」

準備しないとたいへんなのかー??
困ったー!

そんなことはありません。
2024年1月からの電子取引データの電子保存は、猶予措置というものが設けられました。ほとんど誰でも電子帳簿保存法に則った電子保存ができますから安心してください。

弁護士 元国税税理士

そうなんです。
2024年1月からの電子取引に関する電子帳簿保存法では、猶予措置が設けられたことにより、これまで厳しい要件が求められていましたが、一定の対応をすればその要件が免除されるようになりました。
これにより、電子帳簿保存法が求める電子保存に対応できないという事業者は事実上いなくなります。

電子取引データの電子保存を考えた時、この猶予措置は絶対に頭に入れておく必要があります!(詳しくは後述します。)

弁護士 元国税税理士
会社員 新米社長

なぁんだ、安心しましたー
でも請求書や領収書等をデータでやりとりした場合に、電子保存は必須で紙に印刷しての保存はやっぱりダメなんですね。
実際にはどうやって電子保存するのがいいんだろう?
適当にパソコン内に保存しておけばいいのかな?でもクラッシュしたら取引の証拠がなくなっちゃうよね。
クラウドにアップロードしておいたらいいのかな?でもどうやって?
これを機にソフトを導入した方がいいのかな?高かったりするのかな??

2024年1月以降の電子取引データの電子保存の本題はここなんです!
要件がなくなったのは助かったけど、実務では実際にどうやって電子保存すればいいのか?という点です。
ルールが緩くなった中でどのように電子保存するといいのかをこの記事では取り上げて、元国税調査官で税理士の私が、わかりやすく解説していきます。

弁護士 元国税税理士

目次

1 2024年1月開始の改正電子帳簿保存法の義務化とは

2024年1月開始の改正電子帳簿保存法の義務化とはアイキャッチ

2024年1月開始の電子取引に関する電子帳簿保存法とはどういうものか?

これについて最低限実務で知っておくべきことに絞って概要を解説してます。

電子取引に関する電子帳簿保存法についてすでに知っているという方は次の章までジャンプしてください。

この章で扱う2024年1月開始の電子取引に関する電子帳簿保存法の概要について動画での解説もありますので、動画の方が良い方はこちらをご覧ください。

悩む会社員 新米社長

電子帳簿保存法で紙に印刷して保存ができなくなるということは、仕訳日記帳や総勘定元帳なんかの帳簿類や決算書もそうなるのかな?

電子帳簿保存法には、以下の3つがあり、
❶ 帳簿や決算書を電子保存してよい
❷ 領収書等をスキャンして電子保存してよい
❸ 領収書等をデータでやりとりしたら電子保存が強制
電子保存が義務となるのは、この3つ目だけを指しています。

弁護士 元国税税理士

この3つ目の「領収書等をデータでやりとりしたら電子保存が強制」とは具体的にどのようなことをした場合に、電子保存が強制されるのかを確認していきましょう。

1-1 改正電子帳簿保存法で電子保存が義務化される対象(電子取引データ)とは

改正電子帳簿保存法で電子保存が義務化される対象は次のとおりです。

電子帳簿保存法で義務化される対象

電子保存が義務化されたのは、注文書、契約書、送り状、請求書、領収書、見積書等をメールや何らかのシステム等を使って電子的にやり取りした場合のそれらのデータ。

これらのデータを受信した側だけでなく、送付した側も保存義務がある。

所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、請求書、領収書、見積書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められています。
これらの取引情報を、紙ではなく、メールや何らかのシステム等を使って電子的にやり取りした場合に、電子保存の対象になります。

これだけでは、イメージしにくいと思いますので、具体例を見ていきましょう。

改正電子帳簿保存法で電子保存が義務化される具体的事例を挙げると次のようなものが考えられます。

電子保存する対象書類具体的ケース
  • 請求書
  • 注文書
  • 契約書
  • 送り状
  • 請求書
  • 領収書
  • 見積書

 など

電子メールで受領
Amazonや楽天などのASPからモノを購入した場合に、そのサイトからダウンロード
インターネットのホームページ上に表示された領収書等のスクリーンショットを利用するケース
クラウドサービスを利用してやり取りを行うケース(例えば、請求書を共有するのに相手方にURLのついたメールを送信し、それをクリックするとクラウドサービスのサイトに飛び、請求書がダウンロードできる。)
ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用するケース
USBメモリ等の記録媒体を介して受領するケース
EDIシステムを利用するケース
利用明細や支払明細クレジットカードや交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用するケース

備品等をAmazonで購入しているというケースは相当多いでしょうから、ほとんどの事業者の方が対応を迫られることが予想されます。

会社員 新米社長

我が社もAmazonで備品等を購入していますので、対応する必要があるのはわかりました。
具体的にどのように電子保存すればいいのでしょうか。

具体的には2つの方法があります。
❶ 原則的な方法(3つの保存要件)
❷ 猶予措置(税務職員に提示できればOK)

弁護士 税理士

改正電子帳簿保存法は、これらの電子取引データを一定の要件にしたがって電子的に保存することを求めています。
大きく2つの方法があり、それぞれについて解説します。

1-2 原則的な電子保存の方法とは(3つの要件)

電子取引データをそのまま電子的に保存するために電子帳簿保存法では、原則的な方法として次の3つの要件を満たすことが求められています。

改正電子帳簿保存法の電子取引データを電子保存する3要件
  • コンピュータ、ディスプレイとカラープリンタの備え付け
  • 不正な改ざん防止策を講じる
  • 検索機能の確保

1つ目のコンピュータ、ディスプレイ、カラープリンタの備え付けは、税務調査のときに調査官が電子保存された電子取引データを確認する必要があるために、これらの備え付けが求められています。

そもそも領収書等の電子取引データを確認する際には、コンピュータとディスプレイがなければ確認しようがありませんので、これはみなさん持っているでしょう。

プリンタについては、実際に備え付けがない場合でも近隣の有料プリンタ等により税務職員の求めに応じて速やかに出力するなどの対応ができればプリンタの備え付けがされていると取り扱って良いことになっています。速やかに出力できない場合は、プリンタを購入する必要があります。

1つ目の要件は容易に満たせると思います。

2つ目の不正な改ざん防止策を講じるについては、PDFの領収書や請求書などの電子取引データは容易に改ざんが可能で、しかも改ざんが行われたものかどうかの判断が難しいため、改ざんを防止する対策を講じることが求められています。

この時点では深く掘り下げる必要はありませんが、詳しく知りたい方は次の記事を参照してください。

 

3つ目は、やはり税務調査の際に、確認が必要な請求書や領収書等の電子取引データを容易に検索でき、すぐに確認できるように電子取引データの検索機能を設けることが求められています。

3つ目も、この時点では深く掘り下げる必要はありませんが、詳しく知りたい方は次の記事を参照してください。

 

悩む会社員 新米社長

うわぁー
なんか難しそうですねぇー

そうなんです。この要件をすべて満たすのは相当ハードルが高いです。
そこで国税庁は全事業者に電子保存をやってもらうために、この要件がすべて免除される猶予措置を設けました。
ここは要チェックです!

弁護士 元国税税理士

1-3 原則的な3つの要件が免除される猶予措置とは

猶予措置とは次のとおりです。

電子帳簿保存法の猶予措置とは
原則的な3要件を満たすことがシステム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない等の理由でできない場合、次の要件をクリアしていれば、上記3つの要件がすべて免除になり、単に電子取引データを電子的に保存していればよい。

税務職員からの求めに応じて、次の2点を提示又は提出することができるようにしている。

・その電子取引データ
・その電子取引データが書面で作成された場合に準じた形式で出力した書面

 

国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問62では、この猶予措置の適用に関して次のような解説があります。

「保存時に満たすべき要件に従って保存をすることができなかったことに関する相当の理由(システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない等の理由)を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを具体的にご説明いただければ差し支えありません。」

と、かなり柔軟に対応する姿勢が垣間見えます。

この猶予措置について詳しく知りたい場合は、次の記事をご参照ください。

 

会社員 新米社長

税務職員に取引データを提出できるようにしていれば、電子保存さえしていればOKということですね。
ちなみに原則的な方法の3要件もやらず、税務職員にも取引データを提出しなかったり、そもそも電子保存をせずに紙で保存していたらどうなるんですか?

直接の罰則はありませんが、青色申告を提出している事業者は、青色申告の承認取り消しという可能性があります。
ただし、これは最悪の場合で、故意でなければ取り消されることはよほどのことがなければないでしょう。

弁護士 税理士

1-4 電子帳簿保存法の電子保存の罰則とは

前述の電子帳簿保存法で定める2つの方法で電子保存をおこなっていなかったり、そもそも電子的な保存をしておらず紙に印刷して保存していたらどうなるかも確認しておきましょう。

要件に従っていなかったり、紙で保存していた場合は、税法で決められている保存すべき帳簿書類が保存できていないことを意味します。

つまり、税務上大きな問題となるのは青色申告の取り消しの可能性が浮上してきます。

1-4-1 青色申告取り消し

青色申告の要件として、法定の帳簿の備え付けと一定期間の帳簿書類の保存が必要になりますが、それが法令どおりに行われていないことになりますので、要件に違反しており、取消しの理由になりえます。

ただし、これは最悪のケースです。
青色申告の取り消しは、よほど悪質な場合でないと実際に行われることは少ないものです。

電子保存しないことによる青色申告取り消しについては、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問65(国税庁)において、次のように厳しくは適用していかない旨の解説があります。

青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上、その適用を判断して います。 – 略 – その申告内容の適正性については、税務調査において、納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することとなります。

このように猶予措置は、広く適用されるものと考えられていますので、2024年1月からの義務化される電子取引データの電子帳簿保存法は、恐れる必要はないことをご理解いただけたと思います。

電子帳簿保存法のルールにしたがって電子保存していない場合は、経費としても認められないという噂もあったりしますが、そのことについても国税庁が見解を述べています

弁護士 税理士

税務調査においても経費として認められないことになるのではないかと心配している方が見られます。
しかし、これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳 されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにもかかわらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

ただし、法律上は、青色申告の承認を取り消し自由に該当しますので、その可能性があるということは覚えておいたほうがよいでしょう。

次に、罰則で注意すべき点がもう一つあります。

1-4-2 重加算税の加重措置

請求書や領収書等の電子取引データを削除、改ざんするなどして、売上除外や経費の水増し、架空取引による経費計上が行われた場合は、通常の重加算税(原則35%)に10%が加重されます。

従来の紙での保存よりもデータを改ざんされるリスクが比較的高いということで、それを防止するために電子取引データを隠匿したり、改ざんしたりした場合は、重加算税が増えるという措置が講じられました。

これは、実際に不正計算をしなければ問題ありませんので、神経質になるような規定ではないかと思います。

 

会社員 新米社長

私も2024年1月からは領収書等をデータでやりとりした場合には、2つの方法のいずれかで電子保存しなければいけないことがわかってきました。

実務では実際にどのように保存していくといいですか?

猶予措置が設けられたことにより、要件が緩和されたので、どの事業者でも対応できるものとなりましたが、要件が厳しくないとなるとそれはそれでどうやって保存すればいいのか?ぼーんやりとしてきますよね。
これから実務で電子保存する具体的な方法について解説していきます。

弁護士 税理士
こんなに簡単? 全力電子帳簿!

2 2024年1月からの電子帳簿保存法の義務化に対応する4つの方法

2024年1月からの電子帳簿保存法の義務化に対応する4つの方法アイキャッチ

領収書等の取引データを電子保存する方法は主に4つ挙げられます。

取引データを電子保存する4つの方法

  • 自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法
  • クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法
  • 電子取引データの一元管理ソフトを使う方法
  • 取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法

前提としてこれから解説するいずれの方法であっても前述の猶予措置を必ず使う可能性があります。
そこで、猶予措置の条件として「税務職員からの求めに応じて、取引データを提示又は提出することができるようにしている。」というものがありますので、税務職員から「この領収書データを見せてください。」とパソコン等を見られるのが絶対に嫌だという方はこれからの方法で対応することは難しい、ということを先に断っておきます。

弁護士 元国税税理士

一つ一つ確認していきましょう。

2-1 自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法

最初に紹介する方法は、特別なソフトを使わずにコストをかけず、手軽に電子保存する方法です。

電子保存が必要なデータを受領したり交付したりした場合に、まず電子保存する場所が必要になります。

領収書等の電子取引データを保存する先は、クラウドストレージをおすすめします。

2-1-1 クラウドストレージに保存しよう

クラウドストレージに保存する理由としては、パソコンのハードディスクやUSBメモリ等に保存した場合に、税務書類の保存期間(個人事業主7年、法人最大10年)にわたって保存することが難しいためです。

パソコンはいつ何時クラッシュするかもわかりません。
10年前のUSBが使用できる保証もありません。

こんな不確かなものに保存義務のある税務書類を託せるでしょうか?
私は無理です。

弁護士 元国税税理士

クラウドストレージとは、オンライン上でファイル共有ができるサービスです。
インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)にあるストレージ(保管場所)にファイルを格納でき、そのサービスにログインすることでどこにいても同じファイルにアクセスできるのが特徴です。
万が一に備え複数拠点でデータを保管します。拠点間でデータを同期させることで、1カ所のデータセンターがダメージを受けてもデータの消失を防ぐしくみを作っているので、データが消失するリスクは自身のハードディスク等で保管するリスクとは比較にならないほど小さくなります。

代表的なクラウドストレージは、マイクロソフトのOneDrive、Googleドライブ、アップルのiCloudやDropboxなどが挙げられます。

一定容量までは無料で利用でき、それ以上は容量により料金プランがあるのが一般的です。

説明する会社員 新米社長

クラウドに適当にデータをアップロードしておけばOKということですね。

 

いいえ、違います。
猶予措置を適用すれば、金額、日付、取引先での検索要件はなくなりますが、そもそも猶予措置を適用する場合、税務職員に聞かれた時にそのデータを見つけて提示する必要があります。
また、自分で帳簿付けする時や申告書を作成する時に領収書等を後から見返すこともあります。
このような時にすぐに見つけられないというのは困りものですよね。

弁護士 元国税税理士

2-1-2 探しやすいようなフォルダ構成とファイル名にしよう

取引データは、適当に保存するのではなく、次の理由から一定のルールを設けて保存するようにします。

  • 猶予措置を適用した場合に、税務職員の求めに応じてデータを提示する必要があるので、データを見つけやすいようにする
  • 帳簿付けや申告書作成時などで領収書等のデータを後から見返すときに見つけやすいようにする

以上の理由から、最低限次のことをするようにします。

自分で電子保存する際に最低限やるべきこと

❶ クラウドストレージに作成する保存用フォルダは最低でも「年度ごと」と「月ごと」に分ける

❷ ファイル名に最低でも取引年月日と取引先を入れる(例「年月日_取引先」)

❶ 次のように年度ごとにフォルダを作成し、年度の中も12ヶ月分のフォルダに分けるようにしましょう。

クラウドストレージにフォルダ保存例

❷ ファイル名をそのクラウドストレージ内で検索のしやすいような名前にします。
例えば「20240125_アマゾンジャパン合同会社」。

電子帳簿保存法 ファイル名で検索できるように

「2023年度」フォルダ内で「20240125」で検索してみた結果の例が次の画像です。

電子帳簿保存法 ファイル名で検索したみた例

このようにしておけば、容易に保存したファイルを検索できます。

ちなみにここで紹介する方法は、電子帳簿保存法の原則的な要件の「改ざん防止策を講じる」「検索機能を保持する」機能をいずれも満たしていないので、猶予措置を適用することになります。

原則的な方法でこの方法で電子保存する場合は、改ざん防止策では「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け」を行い、検索機能の保持では、ファイル名にさらに金額を追加することで要件を満たすことができます。

この電子保存の方法のメリットとデメリットを挙げると次のようになります。

メリットデメリット
  • 費用がかからない(クラウドストレージに費用がかかる場合あり)
  • 手軽にすぐ始められる
  • 保存期間を満たすか気にしなくていい(税務書類の保存期間中保存し続けるという前提で)
  • データの消失のリスクをすべて背負う
  • 取引データをダウンロードしてアップロードするのが手間
  • 検索のためにファイル名を変えるのが手間
  • 原則的なルールでする場合は、事務処理規程の作成+訂正削除の履歴を残す必要あり、検索要件を満たすためには更なる対応も

2-2 クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法

電子帳簿保存法の要件の中にある「改ざん防止策を講じる」の中に「データの訂正削除を行った場合にその記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等を利用して取引データをやりとりする」というものがあります。

この要件には、一般的なクラウド会計ソフトの金融機関連携により明細を取得して保存する方法が該当します。

例えば、使用しているクラウド会計ソフトとある銀行を連携させて、その銀行の明細をクラウド会計ソフトに読み込んだとします。
通常クラウド会計ソフトはそのデータを個別に編集したり削除できませんので、その読み込んだ銀行の明細それ自体が電子保存に該当することになります。

つまり、クラウド会計ソフトに読み込まれた銀行の明細データが、銀行に通帳がなく、オンラインで明細が見れるだけだった場合、電子保存された銀行との取引データになるという意味です。

【クラウド会計ソフトにアマゾンビジネスを連携して取得した明細サンプル】
クラウド会計ソフトの取引明細例

説明する会社員 新米社長

紙の通帳が発行されないネット銀行の取引明細は、クラウド会計ソフトと連携した明細それ自体で電子保存ができているので、ネット銀行の明細はなくてもよいという意味ですか?

そいういうことです!

弁護士 元国税税理士
会社員 新米社長

これは便利ですね。
日々の帳簿付けのためにデータを読み込むと、それが電子保存にもなっているなんて一石二鳥ですね。

この方法は積極的に使いたいですね。
ただし、この方法は、消費税を申告する義務がある方は、次の点だけ注意してください。
原則課税の方法(簡易課税や2割特例を使わない方法)で申告する場合は、インボイスの保存要件を満たしませんので、この方法だけでは、消費税の仕入税額控除の要件を満たしません。別途インボイスを保存する必要があることに注意です!

弁護士 元国税税理士

なお、クラウド会計ソフトが改ざん防止策を講じる要件を満たしていて、検索機能の保持要件も満たしている場合は、この方法だけで電子帳簿保存法の原則的な方法の要件を満たすことになります。
つまり、この部分は猶予措置を使う必要がないのです。

この電子保存の方法のメリットとデメリットを挙げると次のようになります。

メリットデメリット
  • 日々の仕訳のためにデータを取得してきた時点で完了するので手間入らず。
  • 費用は会計ソフトに含まれるので追加コストなし
  • 原則的な要件を満たして電子保存できる
  • 会計ソフトが税務書類の保存期間を通じて保存できる場合は、税務書類の保存期間を気にしなくていい
  • クラウド会計ソフトに連携できない取引データは別の方法で電子保存する必要あり
  • 消費税を一般課税で申告する場合、インボイスを別途保存する必要あり
  • クラウド会計ソフトを利用していないと使えない

2-3 電子取引データの一元管理ソフトを使う方法

3つ目は、電子帳簿保存法に対応した電子取引データの一元管理ソフトを使って電子帳簿保存法の原則的な3要件を満たしつつ電子保存する方法です。

会社員 新米社長

電子取引データの一元管理ソフトってどんなものでしょう?

それでは、当社が提供している「全力電子帳簿」を例に説明します。

弁護士 元国税税理士

電子帳簿保存法の原則的なルールどおりに電子保存することは難しいと説明してきましたが、その要件を満たしながら電子保存できるようにするソフトを電子取引データの一元管理ソフトとここでは呼んでいます。

当社が提供している「全力電子帳簿」を例にどのようなソフトかを解説します。

❶ 領収書等の電子データを保存する

次のAmazonの領収書を「全力電子帳簿」に保存してみます。

【STEP1】 電子取引データ保存画面にPDFファイルをアップロードする

全力電子帳簿 アップロード画面

アップロードが完了したら
【STEP2】電子取引データの内容をフォームに入力する

全力電子帳簿へアップロード画面 

入力が済んだら保存する。

一覧画面で登録した電子データの内容を確認できます。

全力電子帳簿 一覧表示画面

「検索機能の確保」要件に合った検索が可能となっています。

取引先名で検索してみます。

全力電子帳簿 検索画面

このように「取引先」に記載した文字で検索することができます。

全力電子帳簿」は「改ざん防止策を講じる」要件を「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け」の方法でクリアします。
他社ソフトでは、有料版ではタイムスタンプを付与できるようにし、「7営業日以内に(又は最長2ヶ月+7営業日以内に)タイムスタンプを付す」方法で対応しているケースが多いです。(タイムスタンプでは7営業日以内に押せなかった場合結局「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け」方法で満たすことになるので、タイムスタンプのみで要件を満たすことは通常は難しくなっています。)

このような電子取引データの電子帳簿保存法に対応した一元管理ソフトは2種類あります。

  • クラウド会計ソフトの中に含まれているパターン
  • 単独で使用するソフトのパターン

一つ一つ確認していきます。

2-3-1 クラウド会計ソフトの中に含まれている一元管理ソフトの特徴

クラウド会計ソフトの中に一元管理ソフトが含まれているパターンでは、有料プランの場合には(有料プランの中でも上位プランの場合も)、制限なく使用できることが多いようです。その場合、追加で費用が発生しないというメリットがあります。

また、仕訳に紐づけて電子保存することもできるので、帳簿を見て、この仕訳の証拠書類を見たいという場合にすぐ確認できるというメリットがあります。

説明する会社員 新米社長

使っているクラウド会計ソフトにそのような機能があれば、使わない手はないですね。

悩む会社員 新米社長

あ、私はクラウド会計ソフトを使っていないんだった…

その場合は、会計ソフトとは関係のない一元管理ソフトを使用することになりますね。

弁護士 元国税税理士

2-3-2 単独で使用する電子取引データの一元管理ソフトの特徴

先に紹介した「全力電子帳簿」は、会計ソフトと紐づかずに単独で使用できるソフトです。
(全力電子帳簿も全力会計という会計ソフトと連携できるよう現在開発中で、その機能は2024年半ば以降にリリース予定です。)

通常は保存容量によって月額のサブスクリプションになっているところが多くなっています。
また初期費用がかかるサービスもあります。

私が調べたところ、執筆時点で最も安い電子取引データの一元管理ソフトは以下の3社となっていました。その料金体系と主だったところを参考までに載せておきます。
これら以外のサービスは全体的にかなり高くなっています。

(料金は月額で税抜き表示)

全力電子帳簿バクラク電子帳簿invox電子帳簿保存
料金

月10件まで100円、月100件まで500円
月200件まで1,000円、月300件まで1,500円、これ以上は個別対応
①月200件まで無料
②月200件以上9,000円
③月1000件以上39,800円
50,000件に達するまで①1,980円、②9,800円
50,000件を超過する都度500円プラス
保存期間個人8年、法人11年不明10年
ユーザー数無制限上限①5名②10名③500名無制限
特徴事務処理規程自動作成、削除履歴管理。タイムスタンプ方式①訂正履歴管理のみ②からタイムスタンプ方式
メモ月200件を超えると最安値。
クラウド会計ソフト「全力会計」と2024年中に連携される予定で拡張性あり。
200件まで無料は良心的。
ただし2022年当初500件まで無料であったのを2年を待たず200件へ変更。今後無料枠が減る可能性否定できない。
また月200件を超えると他2社よりも圧倒的に高い。
5万件までを月400件換算すると10年超保存できる計算。これを月1,980円とすると全力電子帳簿並みの安さ。

この電子保存の方法のメリットとデメリットを挙げると次のようになります。

メリットデメリット
  • すべての電子取引データを保存可能
  • 原則的な要件を満たして電子保存できる
  • このソフトが税務書類の保存期間を通じて保存できる場合は、税務書類の保存期限を気にしなくていい
  • 取引データをダウンロードしてアップロードするのが手間
  • 費用が発生する場合が多い

2-4 取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法

4つ目の方法は、例えば銀行の取引明細やAmazonの注文履歴も電子保存する対象の電子取引データに該当しますが、これらのデータは、そのサイトにアクセスすると取引明細や領収書等を画面上で確認することができます。

これらのデータはその性質上通常ユーザー側で削除も訂正もできません。これにより「改ざん防止策を講じる」要件でいうと「データの訂正削除を行った場合にその記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等を利用して取引データをやり取りする」に該当します。

したがってこちらでその取引データをダウンロードすることなく、そのシステム内にあれば、電子保存されていることになります。

この電子保存の方法のメリットとデメリットを挙げると次のようになります。

メリットデメリット
  • 電子保存する手間が完全にない
  • コストがかからないことが多い
  • データを見たいときにそのサイトにアクセスしてログインしてその画面を開く必要がある(多数あると面倒)
  • 取引履歴や領収書等のデータが税務書類の保存期間にわたって保存されるかすべて確認が必要。
  • 保存期間の間保存されない場合は、別の方法で電子保存する必要あり
  • 原則的なルールでする場合は、検索要件を満たさないことがほとんど
会社員 新米社長

なるほど、これらの4つの方法を駆使して電子取引データの電子保存をしていけばいいのですね。
私の場合は、どれを使ってやればいいのかな?
それぞれの方法にメリットとデメリットがあるので、取捨選択が…

 

どの方法も一長一短なので必ずこうしなさいということは言えません。この方法を組みあせて自社の状況に合わせて自社に合う電子保存の方法を見つけていただくしかありません。

ただ、こういう点に注意すべき。このケースはこの方法が効率的ということは言えますので、その点を次の章で解説します。

弁護士 元国税税理士

3 2024年1月からの電子帳簿保存法の義務化にどのように対応すべきか

2024年1月からの電子帳簿保存法の義務化にどのように対応すべきかアイキャッチ

猶予措置が設けられたことにより、電子帳簿保存法の原則的な要件を満たさなくてもよいこととなったので、そこへの対応はひとまず棚上げできる状況にあります。

そこでこの状況下で最も注意しなくてはならない点は、税務書類の保存期間にわたって電子保存することといえるでしょう。

3-1 税務書類の保存期間にわたって電子保存することが最優先

税務書類の保存期間は次のとおりです。

個人事業主法人
7年間10年間

つまり、仕訳帳に登録した取引に関係する契約書や請求書、領収書等の証拠書類を電子保存した場合、この期間電子保存を続けなければなりません。

帳簿付けの根拠となる証拠書類がなくなってしまっては、税務調査で何か言われた時にそれを証明するのはたいへん困難になります。
青色申告が取り消される可能性もあります。
取引の証拠書類は、保存期間の間は絶対に保存して保管しておかなければなりません。

弁護士 元国税税理士

これを考慮すると前述の4つの方法のうち最も効率的であったAmazonの取引履歴や金融機関の取引明細データに代表される「取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法」については、この期間データを保持しないサービスは使えないことになります。

例えば、取引履歴は3年間しか保存されないようなケースを考えると、結局どんなに遅くても3年後には別の3つの方法のいずれかで保存する必要があります。だったら最初から別の方法で保存しておいた方がいいとなります。

例えば、ヨドバシカメラの注文履歴は5年より前のものが表示されないようです。その場合は、ヨドバシカメラの注文履歴に頼るのは危険ということになります。

その点別の3つの方法であれば、保存する先が1箇所なので、その場所が税務書類の保存期間保存できるものであれば、その点を気にする必要がありません。

電子保存の方法保存期間の心配
自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法なし(自分で管理)
クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法なし(最初に確認)
電子取引データの一元管理ソフトを使う方法なし(最初に確認)
取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法あり

3-2 1つのサイトでたくさんの取引を行っている場合

次に1つのサイトで1日に複数の取引がある場合など、たくさんの取引がある場合を考えてみましょう。

このようなケースでは、その領収書や請求書等のデータを一つ一つダウンロードして保存場所にアップロードするのはかなり手間です。

例えば、オンライン決済サービスを使って、毎日複数の代金を受領しているようなケースを考えてみましょう。
オンライン決済サービスの代表的なものは、PayPal、Square、Stripe、AmazonPayといったところでしょうか。

保存期間を満たす期間データを保存してくれるなら、「取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法」で絶対に保存したいところです。

次にこれらのサイト上で保存できないなら、「クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法」で対応したいところです。この方法でも取引相手先まで取り込めない場合もありますので、その場合は、CSV出力して保存する等の方法を考える必要があります。

次にAmazonを例に考えてみましょう。
Amazonで毎週購入しているような場合は、領収書等のデータをダウンロードして、保存先にアップロードして日付や取引先等を入力してという面倒な作業は避けたいところです。

その場合は、保存期間が問題ないかを確認し、問題なければ「取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法」で保存することを第一に考えます。Amazonビジネスは10年保存することを公表しているので、この方法が使えます。

ヨドバシカメラのように保存期間が保証されいない場合は、「クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法」を検討します。

これもダメな場合は、「電子取引データの一元管理ソフトを使う方法」または「自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法」で対応します。

3-3 1つのサイトで月に1回程度しか取引データがない場合

次に1つのサイトで月に1回程度しか取引がない場合を考えてみましょう。

例えば、光熱費のオンライン明細、プロバイダの明細や月額のクラウド会計ソフト等に月額で課金されるようなサブスクリプションサービスを使用していて、その領収書をそのサービス上のあるページからダウンロードするようなケースを考えてみましょう。

これを「取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法」で電子保存しようとした場合、次のようなデメリットがあります。

 

❶ 保存期間を満たす期間そのデータが保持されるかをすべてのサイトで確認しなければなりません。調べても公表されていないケースもあり、途方に暮れる場合もあります。

❷ 仕訳日記帳に取引を登録する際に参照する場合や、決算の時のように後から見返す際に、月毎に領収書等がまとまっていたり、1箇所にまとまっていて検索できればすぐに見つけられます。それに対して、それぞれのサイトに見に行ってログインして領収書ページを見に行くとなったときに1度や2度ならいいですが、そうでない場合は、発狂状態になる可能性もあります。

このようなケースは、月に1度ダウンロードして「電子取引データの一元管理ソフトを使う方法」または「自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法」で1箇所にまとめておいた方が効率的でしょう。

3-4 メールで領収書等の取引データをやりとりした場合

メールで請求書や領収書等をやりとりした場合は、「電子取引データの一元管理ソフトを使う方法」または「自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法」のいずれかで保存する必要があります。

他の2つの方法は取れません。

 

ここまで4つの方法を実務の具体的な場面に当てはめて考察してきました。
ここまでのところをまとめてみましょう。

電子保存の方法1つのサイトで取引数が多い場合1つのサイトで取引数が少ない場合メールでやりとりした場合
取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法保存期間満たす:
保存期間満たさない:
クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法
電子取引データの一元管理ソフトを使う方法
自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法

※消費税を原則課税で申告する場合はインボイスを別途保存する必要あり

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4 まとめ

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2024年1月から開始される改正電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存の義務化についてと、それにどのように対応すべきかとについて解説してきました。

まず、電子帳簿保存法が定める電子取引データの電子保存の原則的な要件があり、それが猶予措置により免除になるということは絶対に押さえておかなければならない点です。

その上で、実務では以下の4つの方法を取捨選択して保存していくことになります。

  • 自分でクラウドにフォルダを作って保存する方法
  • クラウド会計ソフトの金融機関連携機能を使って取引明細を取り込む方法
  • 電子取引データの一元管理ソフトを使う方法
  • 取引履歴等のデータが保存されているサービス内で保存する方法

そしてこの方法は、次の点に注意して自社に合う方法を組み合わせて効率的な方法を取捨選択していくということがポイントでした。

  • 税務書類の保存期間にわたって電子保存し続けなければならない
  • 1つのサイトで取引数が多いケースの対応方法
  • 1つのサイトで取引数が少ないケースの対応方法
  • メールで取引データをやりとりした場合の対応方法

日々の事業で忙しい皆さんは、是非この記事を参考に巷の噂に惑わされず、最短距離でこの大改正に対応していっていただければと思います。

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コメント

「プロが解説!2024年電子帳簿保存法の義務化に対応する方法4選」に対する1件のコメント

  1. 通りすがりの電帳法マニア

    とても詳しい。もっと多くの人が見ればいいのに。

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